転職活動を開始するときにまず選択肢として思い浮かぶのは転職エージェントではないでしょうか。
大手の転職エージェントは宣伝にも力を入れていることもあり、みなさんも社名・サービス名は聞いたことがあると思います。
「取扱い求人数No.1!」
「顧客満足度No.1!」
などのキャッチコピーを見ると、登録すればきっと理想の転職を実現できると期待されるかもしれません。
私は社会人歴≒転職活動歴で10回転職していますが、これまで30社以上の転職エージェントに登録してきました。
なかには登録はしたものの、最初の面談以来一切連絡の来ない転職エージェントや数回紹介はあったものの応募に至る案件がなかったエージェントもありました。
そこでこの記事では、これまでの私の経験から、「転職エージェントのデメリット」と「使ってはいけない転職エージェントの特徴」について解説します。
この記事を読めば、自分に合った転職エージェントの見つけ方・付き合い方がわかるようになります。
- 転職エージェントのビジネスモデル
- 転職エージェントを利用するメリット
- 転職エージェントを利用するデメリット
- こんな転職エージェントには注意!
- 転職エージェント以外の転職方法
それでは、転職エージェントのデメリットと使ってはいけない転職エージェントの特徴について解説していきます!
転職エージェントのビジネスモデル
それでは、まずは簡単に転職エージェントのビジネスモデルについて説明します。
求職者、転職エージェント、応募企業の関係は以下の図のとおりです。
採用企業が採用したい人材の採用条件を転職エージェントに伝えて紹介依頼をおこなう。
転職エージェントは自社に登録している求職者の中から採用条件にマッチしている人材に募集ポジションの情報を共有し、応募を促す。
転職エージェントがLinkedIn等のSNSや転職サイトを通じて自社に登録していない人材にコンタクトする場合もあります。
求職者は転職エージェントを通じて応募依頼をおこない、転職エージェントは採用企業に対して求職者の推薦をおこなう。
転職エージェントは選考プロセスにおいて、採用企業と求職者の間に入り、面接のセッティング、条件交渉などをおこなう。
求職者が採用された場合、採用企業は転職エージェントに成功報酬を支払う。(採用された人材の年収の30~40%程度といわれています。)
転職エージェントのビジネスモデルと上手な付き合い方については、以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧下さい。
転職エージェントを利用するメリット
それでは次に転職エージェントを利用するメリットを5つ説明します。
- 非公開求人の紹介
- 面接指導・応募書類の添削を受けられる
- 条件交渉を行ってもらえる
- 転職市場の情報が得られる
- 募集案件の背景等の情報が得られる
①非公開求人の紹介
採用企業の様々な事情によって、非公開で募集される求人があります。
そういった非公開求人に応募できることが転職エージェントを利用する最大のメリットだと考えられます。
一例でいいますと、リクルートエージェントの非公開求人数は30万件になります(2023年7月現在)。
②面接指導・応募書類の添削を受けられる
転職エージェントには以下の豊富なデータがあります。
- これまでの登録者の経歴
- これまでに成約したノウハウ
- 採用企業が求める人物像
- 年収の相場
転職エージェントに登録するとこういったデータに基づき、書類選考・面接を突破するためのアドバイスを受けることができます。
また、応募書類を第三者の目でチェックしてもらえることも大きなメリットです。
③条件交渉を行ってもらえる
労働力不足の問題もあり、職種・ポジションによっては売り手市場ではありますが、やはり応募者が採用企業と直接雇用条件の交渉をするのは大変です。
また、採用企業の給与データがないと交渉においてギリギリのラインがどこなのか見定めることも困難です。
転職エージェントという第三者を介すると、こちらの希望も伝えやすいですし、合理的な落としどころも提案してもらえます。
④転職市場の情報が得られる
転職は、転職市場の動向というマクロの視点と個人の事情・目標というミクロの視点で考える必要があります。
前者の転職市場については、個人で収集できる範囲には限界があります。
また、市場の動向は自分の志望する職種や業界によっても個別に判断する必要もあるかもしれません。
転職エージェントに登録すると、担当のキャリアコンサルタントから自身の転職活動にかかわる最新情報を入手することが可能です。
⑤募集案件の背景等の情報が得られる
転職エージェントが採用企業から求人案件を預かる際には、採用企業から採用背景や求める人物像をヒアリングします。
採用企業と密に連携が取れている転職エージェントの場合、このヒアリングで得る情報が大変貴重になります。
求人票には記載されていない採用企業の本音を聞くことができることもあります。
こういった求人票にはない情報を入手して応募書類を作成したり、面接準備を行えるとライバルに差をつけることも可能です。
自分に合った転職エージェントの選び方については以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧下さい。
転職エージェントを利用するデメリット
次に転職エージェントを利用するデメリットについて説明します。
- コミュニケーションの時間が取られる
- 自分のペースで活動できない
- 情報にバイアスがかかっているリスク
- 登録のハードルが高い場合がある
- 転職エージェントを利用しない採用企業もある
①コミュニケーションの時間が取られる
転職エージェントの利用においては担当のコンサルトと様々なコミュニケーションが発生します。
- 登録時のコンサルティング
- 案件の紹介
- 応募手続き・応募書類の添削
- 面接の日程調整・面接指導
- 面接結果の連絡
- 条件交渉
- 入社後のフォロー
複数のエージェントに登録したり、複数の企業に応募するとその分コミュニケーションが増えることになります。
在職中に転職活動を行う場合、通常の多忙な業務をこなしながらこれらのコミュニケーションに対応することになります。
②自分のペースで活動できない
現職の仕事やプライベートで多忙なタイミングであっても、転職エージェントからは案件は紹介されます。
自分が転職活動に時間が割けないタイミングでも転職エージェントに対応する必要が生じてしまいます。
また、自分がいま転職したいと思っても、転職エージェントから紹介がない限り、こちらでできることはありません。
転職エージェントのビジネスは採用企業の依頼によって成立します。
従って転職エージェントを利用する転職活動は採用企業と転職エージェントのペースですべてが動きます。
③情報にバイアスがかかっているリスク
転職エージェントの報酬は採用企業が人材を採用することによって支払います。
転職エージェントを利用した転職活動においては採用企業の都合が優先されると考えておきましょう。
つまり、採用企業も転職エージェントも応募者にとって不都合な事実は伝えないリスクがあります。
例えば、私は常に転職活動を継続しているので、頻繁に求人を出している企業を把握しています。
転職エージェントからそういった企業から紹介があっても、まず転職エージェントからその様な情報が伝えられることはありません。
こちらから「この企業はいつも欠員募集されてますよね?」と伝えて、はじめて「実は・・・」といった感じで実情が説明されることが多いです。
④登録のハードルが高い場合がある
転職エージェントにおいて登録者をサポートするリソースには限りがあります。
従って、転職エージェント側の合理性からいうと、紹介して成約する可能性の高い人材を優先したいと考えます。
特にハイクラス案件を扱っている転職エージェントに多い傾向ですが、登録に高いハードルを設定している場合もあります。
また、仮に登録できても、求める経験・スキルが高いため紹介案件がほとんどないケースもあります。
⑤転職エージェントを利用しない採用企業もある
最近は人材獲得競争が激化していることもあり、以前よりも転職エージェントを利用する企業は増えてきています。
しかしながら、依然として直接応募しか受け付けない企業は一定数存在します。
また、転職エージェントを利用していても、転職エージェントに支払う報酬を回避するために直接応募の応募者を優先するケースもあります。
こんな転職エージェントには注意!
転職エージェントのデメリットが整理できたところで、使ってはいけない転職エージェントの特徴について説明します。
- レスポンスが遅い
- 募集案件の背景情報がない
- とにかく数多く応募させようとする
- 応募プロセスが機械的
- 応募企業における成約実績がない
①レスポンスが遅い
これは転職エージェントを利用していると、経験している人も多いかもしれません。
レスポンスに関しては採用企業側の問題の可能性も確かにあります。
しかしながら、何が原因でレスポンスが遅れているのかの説明もないエージェントは注意が必要です。
また、私の登録している外資系に特化した転職エージェントで、書類選考・面接を通過したときにしか連絡がないところもあります。
②募集案件の背景情報がない
転職活動は情報戦です。応募者としては限られた書面・面接でどれだけ面接官に刺さるアピールができるかが重要です。
面接官に刺さるアピールをするためには、採用背景の分析が欠かせません。
募集要項に書かれていない採用企業の思惑をどれだけヒアリングできているか確認しましょう。
これができていないエージェントには、その後の面接対策や条件交渉のサポートも期待できません。
③とにかく数多く応募させようとする
転職エージェントと面談すると、特に日系大手転職エージェントの場合、
「内定をもらっている人は平均〇社応募していますよ。」
「少しでも気になる企業があったら積極的に応募しましょう。」
と説明(プレッシャー)を受けることがあります。
若手人材、職種・業種を広めに考えている人、とにかく早く転職を決めたい人には当てはまる戦略かもしれませんが、必ずしも数多く応募することが正解とは限りません。
また、採用企業によっては応募者を記録しているところもあり、採用企業のルールによっては、一度見送りになると一定期間再応募ができない、という事もありえます。
転職エージェントとしては、自分が紹介した人材であれば誰が採用されても良い訳です。
少しでも自社の紹介した人材が採用される可能性を上げるために多くの応募者を紹介したいと考えます。
無駄打ちでデメリットを被るのは応募者です。
自分のキャリアプランに合わない求人の応募を強く進めてくるエージェントは注意が必要です。
④応募プロセスが機械的
大手転職エージェントの場合、案件の紹介、応募、日程調整、先行結果等をすべてエージェントのシステム上で行う場合もあります。
こうしたシステムは、転職エージェントにとっては数多くの登録者を機械的に管理できるメリットがあります。
いっぽう応募者としては、各プロセスが機会的なので、ちょっとした疑問や相談に柔軟に対応してもらえないデメリットもあります。
私の場合、以前気になる企業からスカウトメールが届き、「正式に応募する前にカジュアル面談を行って頂きたい」とコメントを入れました。
しかしながら、そのままシステム上で正式な採用プロセスに入ってしまったことがありました。
特に転職活動に慣れていない人は、担当のコンサルタントが色々な不安や疑問に丁寧に対応してもらえるエージェントを利用する必要があります。
また、採用する側として、こうした機械的に大量に送られてくる応募書類は、使いまわしている印象を受けることもあり、応募理由がよく分からないことも少なくありません。
⑤応募企業における成約実績がない
気になる求人が紹介された場合、必ず応募依頼前にその転職エージェントから過去に採用企業に紹介した人材が採用された実績があるか確認しましょう。
採用の実績があれば、その転職エージェントにはその採用企業に関する応募から入社までに至る採用プロセスのデータがあるからです。
過去の内定者が面接で受けた質問等も共有してもらえる可能性もあります。
こういったデータは面接対策や条件交渉で活きてきます。
特に最終面接ではカルチャーフィットや人物像が重視されるので、過去の採用実績で得られるデータは貴重です。
もし選べるのであれば、応募する企業とこれまで成約実績がない転職エージェントは避けるようにしましょう。
転職エージェント以外のおすすめの転職方法
最後に転職エージェント以外のおすすめの転職方法について説明します。
様々な転職方法を利用することでそれぞれのデメリットを補完することができます。
- 転職サイト
- リファラル採用
- 直接応募
- ダイレクト・リクルーティング
①転職サイト
転職サイト:代表的なサービス
リクナビNEXT転職エージェントと並び、転職サイトは転職活動でまっさきに思い浮かべる転職方法という方も多いでしょう。
採用企業が広告費を支払って、転職サイトに自社の求人案件を掲載しています。
応募者は転職サイトに自分の経歴を登録しておくと、掲載されている求人に応募することができます。
求職者は無料(ビズリーチは有料プランあり)で利用できます。
自分のペースで活動できるメリットがあるいっぽう、転職エージェントの様なサポートは得られないデメリットがあります。
②リファラル採用
「リファラル採用」とは、採用企業が自社の社員の知人に応募してもらう採用方法です。
私の現職は、以前在籍していた勤務先の元取引先で、当時やりとりしていた担当者の紹介で入社しました。
採用企業と応募者の両方を知る人による紹介なので、入社後フィットする可能性が高いことがメリットになります。
いっぽう、キャリアの選択という重大な決断を紹介者に依存することがデメリットになります。
③直接応募
採用企業が自社の採用サイト、SNS、各種広告媒体を通じて応募者に直接応募してもらう採用方法です。
採用企業が他の方法で募集していない場合、応募者としては直接応募が唯一の応募方法になります。
直接応募では、応募者は採用企業と直接コミュニケーションを取るため、タイムラグが発生しないメリットがあります。
いっぽう、残業の実態、年収レンジ等の項目は、採用企業には直接は聞きづらいことがデメリットになります。
④ダイレクト・リクルーティング
「ダイレクト・リクルーティング」とは、採用企業がLinkedIn等のビジネスSNSを通じて直接候補者にアプローチする採用方法です。
私はLinkedInのプロフィールに詳細な経歴を記載するようにしていますが、採用企業から直接アプローチされることがあります。
メリットは採用企業側からのアプローチなので、応募すると面接に進む可能性が高いことです。
基本的に応募者は待ちの姿勢になりますので、デメリットは応募者が募集時期をコントロールできないことです。
それぞれの転職方法の詳細とメリット・デメリットについては以下の記事で詳しく解説していますのであわせてご覧下さい。
こんな転職エージェントは使ってはいけない!:まとめ
以上、今回の記事では転職エージェントのデメリットと使ってはいけない転職エージェントの特徴を解説しました。
転職エージェントを利用するデメリットは以下の5つです。
- コミュニケーションの時間が取られる
- 自分のペースで活動できない
- 情報にバイアスがかかっているリスク
- 登録のハードルが高い場合がある
- 転職エージェントを利用しない採用企業もある
また、使ってはいけない転職エージェントの特徴は以下の5つです。
- レスポンスが遅い
- 募集案件の背景情報がない
- とにかく数多く応募させようとする
- 応募プロセスが機械的
- 応募企業における成約実績がない
使ってはいけない転職エージェントに登録してしまうと、貴重な時間を取られてしまうリスクがあります。
私の経験から、転職活動は複数の転職方法を組み合わせることをおススメします。
転職サイト、リファラル、直接応募、ダイレクトリクルーティングも利用することで転職エージェントのデメリットを補完することができます。
この記事が参考になれば幸いです。最後まで読んで下さりありがとうございました!