大変な書類選考や面接を経て、晴れて転職が決まったのも束の間、転職活動の最後に「退職交渉」という大きなイベントが控えています。
今回が最初の転職の場合、どうやって退職を切り出して円満に退職できるか悩んでいる方もいらっしゃると思います。
現職での人脈は貴重な財産です。今後のキャリアにおいても有効活用しなければなりません。
また、現職で知り合った同僚・取引先と将来思いがけない形で再会する可能性もあります。
そのためには円満に退社し、転職後も連絡を取り合う関係性を構築する必要があります。
私はこれまで10回転職していますが、なかには転職後に疎遠になってしまった勤務先もあり、今でも後悔しています。
そこでこの記事では、これまでの私の経験から、退職時にやってはいけないことと円満退職のコツについて解説します。
- なぜ円満退職が重要なのか?
- 退職時にやってはいけないこと7つ
- 将来につながる円満退職の7つのコツ
ぜひこの記事に書かれているコツを実践して、今後のキャリアにつながる円満退職をめざしましょう!
それでは、退職時にやってはいけないことと円満退職のコツについて解説していきます!
なぜ円満退職が重要なのか?
まずはなぜ転職活動において円満退職が重要なのか説明します。
- 転職先へ入社するスケジュールを守るため
- 将来のリファレンスチェック対策
- 将来のバックグラウンドチェック対策
- これまでの人脈を今後のキャリアで活かすため
①転職先へ入社するスケジュールを守るため
選考が終了すると、転職先と雇用に関する諸条件を詰めることになります。
入社日は企業によっては柔軟なケースもありますが、一般的には「1日も早く入社してほしい」というのが採用企業の本音です。
転職先の要望と現職での退職に必要な期間を見積もって入社日を合意することになります。
現職でスムーズに退職できないと転職先と約束した入社日を守れなくなり、最悪の場合は内定取り消しとなる可能性もあります。
また、入社前から転職先での自分の評価を落とすことになりかねません。
転職先の第一印象は非常に重要です。第一印象がネガティブなものになると、入社後にそれを覆すのは非常に大変です。
②将来のリファレンスチェック対策
今回の転職先があなたのキャリアの終着地になるとは限りません。
場合によってはまた転職活動をする可能性もゼロではありません。
その際に採用企業によっては、内定前にリファレンスチェックが行われます。
リファレンスチェックはこれまで在籍した企業の上司や同僚に依頼することが一般的です。
在籍した会社を円満に退職していれば、次回の転職機会の際にリファレンスチェックも依頼しやすくなるでしょう。
なにより、リファレンスチェックで当時の働きぶりなどについてポジティブな解答をしてもらえれば選考時に強力なサポートになります。
③将来のバックグラウンドチェック対策
リファレンスチェックと同様ですが、バックグラウンドチェックでも過去に在籍した企業に関する情報がチェックされます。
リファレンスチェックとは違い、バックグラウンドチェックでは在籍した「事実」のチェックが主な目的になります。
しかしながら、円満退職しておくことでバックグラウンドチェックでネガティブな情報が拾われることを避けることができます。
④これまでの人脈を今後のキャリアで活かすため
現職での社内・社外のネットワーク(人脈)は今後のキャリアにおいて貴重な財産になります。
なかには前職の企業と取引する上級者もいます。
そこまでいかなくても、知見を共有してもらえたり、取引先を紹介してもらえたりするだけでも有難いものです。
一例ですが、私は転職先で特許事務所を開拓する必要があったのですが、前職の上司から実績のある事務所を紹介してもらったことがあります。
また、今後ますます労働人口が減少することもあって、企業側も出戻りを歓迎する動きが増えてきています。
将来の可能性をひとつでも多く残しておくためにも前職との関係を維持することが重要になるでしょう。
退職時にやってはいけないこと7つ
それでは円満退職の重要性に続いて、円満退職のためにやってはいけないこと7つを説明します。
- 退職日まで十分な期間を確保しない
- 直属の上司に伝えない
- 交渉の余地を残してしまう
- 経営陣・上司を批判する
- 引継ぎをしない
- 転職先を伝える
- 情報を持ち出す
①退職日まで十分な期間を確保しない
退職日の設定については以下の3つの要素を考慮する必要があります。
- 法律上必要な期間:2週間
- 就業規則上必要な期間:1か月から2か月(企業による)
- 引継ぎに必要な期間:役職や担当する業務・プロジェクトによる
「法律上必要な期間は2週間」だからといって、「2週間後に退職します」では円満退職を望めません。
円満退職のためには、引継ぎが完了するまでの期間を見積もって確保する必要があります。
また、企業によっては就業規則で、
「有休消化開始前から逆算して、〇ヶ月前までに退職を申し出ること」
となっている場合もあります。退職を申し出る前にかならず就業規則を確認しましょう。
わたしの場合は2-3か月前に申し出ることが多いです。
転職先には「現職の就業規則で〇ヶ月の猶予が必要」ということを説明すれば、基本的には理解してくれるでしょう。
あと、意外かもしれませんが、退職を申し出てから長く在籍することもおススメしません。
理由は2つあります。
まず、特に外資系企業の場合、内定後であっても実際に入社するまでは何でも起こり得ます。
入社するまでに長い時間が経過している間に、リストラが開始されて内定が取り消さりたり、採用してくれた上司が退職してしまったり、といった可能性も否定できません。
また、現職においても退職が決まっている社員は扱いづらいということはどうしても出てきます。
周りへのモチベーションの影響や情報管理の観点からあまり長くいてもらっても困る、という可能性もあるのです。
現職の勤務先には迷惑をかけない程度になるべく速やかに、というのがわたしが心掛けていることになります。
②直属の上司に伝えない
いきなり上司の上司や人事部門に退職の意思を伝えることもNGです。
直属の上司を飛び越えて退職を進めようとすると、こじれる可能性が高いです。
円満退職のプロセスにおいて、上司は「味方」、「協力者」にすべき存在なのです。
そのためには上司の存在をリスペクトして、円満退職に協力してもらえるように働きかける必要があります。
また、いきなりメールやチャットで退職の意思を伝えるのもNGです。
上司以外の同僚・他部署や取引先に退職の事を伝えるタイミング・方法についても、必ず上司と相談・確認するようにしましょう。
③交渉の余地を残してしまう
退職の意思を伝えると、よくある反応は、
「希望があればできる限り対処するから思い直してくれ」と「いったん私に預からせてくれ」です。
しかし、ここで話し合いや検討の余地を残してしまうと、退職日が決まらないまま時間が過ぎてしまうことになります。
そうなると入社準備を進めている転職先にも迷惑をかけることになります。
会社側には退職手続きをスムーズに進めるメリットやモチベーションは基本的にありません。
むしろ少しでも時間を稼いで退職日を先延ばしにしようとする動きを見せることもあり得ます。
従って、こちらから積極的に働きかける必要があります。
④経営陣・上司を批判する
退職理由を聞かれたときに、本音として経営陣や上司を批判したい気持ちがあったとしても、それを伝えることは我慢しましょう。
退職交渉の最大の目的は、「転職先に迷惑を掛けないこと」と「自分が希望する日までにスムーズに円満退職すること」です。
また、自分からネガティブな要素を積極的に伝えなくても、人事から「退職者アンケート」という形で、「ぜひ本音で答えてください」という依頼があるかもしれません。
しかしながら、今後のキャリアにおいて、その企業、同僚とどこでどんなご縁があるかわかりません。
私はアンケートであっても、ネガティブな事は一切書かないようにしています。
⑤引継ぎをしない
引継ぎをしない、またはいい加減な引継ぎをすると、それまでの貢献度に関係なく、退職時の印象としては最悪なものになります。
これまで構築してきた人間関係が退職時の印象で崩れてしますのは本当にもったいないことです。
引継ぎを受けてくれる同僚にとっては気の重い作業となり、引き継ぐ方としては気が引けてしまう気持ちは分かります。
また、既に心は転職先に向いていて、モチベーションの上がる作業ではないかもしれません。
しかしながら、円満退職のためには「引継ぎの質が去り際の印象を決める」という意識で取り組む必要があります。
⑥転職先を伝えてしまう
上司や同僚から転職先について聞かれることもありますが、答える必要なありません。
こちらに答えるメリットがないからです。
伝えてしまうと、最悪の場合、嫉妬や嫌がらせで円満退職の障害となるリスクもあります。
また、同業他社に転職する場合は、必要以上に警戒されます。転職先については、転職後に連絡すれば十分です。
あなたが担当していた現職の取引先に対しても配慮が必要です。
あなたが退職しても取引先と退職する会社の関係は続きます。
取引先はあなたの今後よりも新しい担当者と良い関係を維持できるかを気にしています。
取引先に対しても、転職先をお知らせするのは転職後にしましょう。
⑦情報を持ち出す
勤務先の秘密情報を持ち出す行為は、刑事上・民事上の両方の責任を追うリスクになります。
人材の流動性が高まるにつれて、情報の持ち出しの事件は増加傾向にあるため、企業側も退職者に対する警戒を強めています。
大手回転ずしチェーンの社長が前職の原価の情報を持ち出し、営業秘密侵害の容疑で逮捕されたケースでは、地裁で懲役3年、執行猶予4年、罰金200万円の有罪判決が下されました。
また、秘密情報ではなくても、勤務先の情報を持ち出すことは、勤務先の不信感を募らせることになります。
転職先で現職のノウハウを活かして貢献したい気持ちは分かりますが、リスクが大きすぎます。
勤務先の情報を持ち出すことは絶対にやめましょう。
また、勤務先から支給されていたPCや携帯電話・スマートフォンにプライベートの情報やファイル等が残っていないか、返却前に十分にチェックしておきましょう。
将来につながる円満退職の7つのコツ
退職時にやってはいけないことを説明しましたので、ここでは将来につながる円満退職の7つのコツについて説明します。
- 退職の覚悟を決めてから退職交渉を開始する
- 普段から上司と定期的な面談を行う
- 引継ぎは全力で行う
- これまでの感謝を伝える
- 連絡先を伝える
- リファレンスチェックに応じることを伝える
- 転職後に近況報告する
①退職の覚悟を決めてから退職交渉を開始する
退職を申し出ると、まず引き止めか時間稼ぎに直面します。
退職者としてできる協力は、「就業規則のスケジュールを守ること」と「引継ぎをしっかり行うこと」です。
これら2点をふまえて退職までのスケジュールと覚悟を決めて退職を申し出るようにしましょう。
また、退職理由を、業務内容、勤務地、人間関係、待遇などにしてしまうと勤務先に対処・検討する機会を与えてしまいます。
私の場合は、家庭の事情や個人的な人間関係で断れないお話であるなど会社側で調整ができない様な理由をお伝えする様にしています。
あくまで交渉できる余地があるのは時期のみで、退職そのものは決定事項であることを明確にしています。
②普段から上司と定期的な面談を行う
上司に退職を申し出る場合、「大事なお話があるのですが、どこかでお時間を頂けないでしょうか」と切り出すことが多いかと思います。
しかし、このやり方だと、上司に退職の申し出だと気づかれ、「慰留の説得材料を集める時間」と「カウンターオファー*の準備をする時間」を与えることになります。
*「カウンターオファー」とは、退職を申し出た社員に対して、引き留めのために提示する条件です。
私はどの会社でも普段から上司と週1回の定期的な面談の時間を設定してもらっています。
普段は業務の進捗報告や相談が面談の趣旨となりますが、退職を申し出るときは、この面談の時間を使います。
上司には不意打ちとなり心苦しいのですが、自分の退職意思は固まっていますので、ここで一気に退職日までのスケジュールを詰めるようにしています。
③引継ぎは全力で行う
引継ぎは現職での業務のひとつであり、最後のプロジェクトです。
引継ぎの質が去り際の印象を決めます。
もう既に心は転職先にいっているかもしれません。
しかしながら、退職後のネットワーク維持は将来への投資と思って、引継ぎは求められている以上のものを残すくらいのつもりで全力で行うことをおススメします。
私が在籍した企業でも引継ぎをいい加減に行う(又は行わない)同僚は多数いました。
そのため、逆にレベルの高い引継ぎをすると、その分好印象を得ることができます。
引継ぎの時間を取ってくれない、引継ぎ相手を指定してくれない場合は、書面でしっかりとまとめて残していくようにしましょう。
④これまでの感謝を伝える
転職先が決まると、つい転職先への意識が強くなってしまいがちになります。
退職日を迎えるまでは(有給消化中であっても)、現職の社員であることの意識を持ち、これまでお世話になった上司・同僚・取引先へ感謝を伝えることを継続しましょう。
また、退職日まで可能な限り自分で処理できる業務は完了させる姿勢を見せることも大事です。
その言動はきっと良い印象として残り、今後のキャリアにおいてもポジティブな要素となるでしょう。
⑤連絡先を伝える
私は10回転職していますが、最初の数社では、特に親しくしていた人以外には退職時にあまり積極的に自分の連絡先を伝えていませんでした。
しかしながら、その後のキャリアにおいて、「あの人と繋がっておけば良かったな」と後悔したことが何度もありました。
そんなこともあって、その後は退職時に同僚に対して自分の連絡先と在籍中のことで何かあったら遠慮なく連絡して欲しい、と伝えるようにしました。
実際に退職後に問い合わせが来ることはまれですが、丁寧な印象を残すことはできますのでおススメです。
⑥リファレンスチェックに応じることを伝える
個人的に親交があった人には、退職時に今後必要な場合にはリファレンスチェックに応じることを伝えておきましょう。
自分が協力することで相手にも自分のリファレンスチェックに協力してもらえるからです。
現在採用企業の40%がリファレンスチェックを導入しているといわれています。
将来の転職活動のためにリファレンスに応じてくれる知人を確保しておくことは非常に重要です。
⑦転職後に近況報告する
退職時にも挨拶はされているかと思いますが、私は転職後にも近況報告もかねて前職の上司・同僚に連絡を入れるようにしています。
退職時に連絡先を伝えていても、前職の同僚が退職した人の事を思って連絡してくることは稀だからです。
すべての人と繋がり続けることはないかもしれませんが、前職での人脈は貴重な財産になりますので可能な限り維持するようにしましょう。
また、転職後にLinkedInなどのビジネスSNSで自分の取り組みや成果を投稿することも近況報告という意味では有効な手段となります。
まとめ
以上、今回の記事では退職時にやってはいけないことと円満退職のコツについてを解説しました。
退職時にやってはいけないことは以下の7つです。
- 退職日まで十分な期間を確保しない
- 直属の上司に伝えない
- 交渉の余地を残してしまう
- 経営陣・上司を批判する
- 引継ぎをしない
- 転職先を伝える
- 情報を持ち出す
また、将来につながる円満退職の7つのコツは以下のとおりです。
- 退職の覚悟を決めてから退職交渉を開始する
- 普段から上司と定期的な面談を行う
- 引継ぎは全力で行う
- これまでの感謝を伝える
- 連絡先を伝える
- リファレンスチェックに応じることを伝える
- 転職後に近況報告する
いまの勤務先を去ってもあなたのキャリアは完全にリタイアするまで続きます。
いま労働市場で人材の流動性はこれまで以上に高まっています。
- 元同僚も自分の転職先に転職してきた。
- 元同僚が取引先に転職した。
- 現職の会社が古巣を買収した・古巣に買収された。
など、様々なパターンで元同僚と再会することも十分考えられます。
転職後のキャリアをより充実したものにするためにも円満退職を目指しましょう。
この記事が参考になれば幸いです。最後まで読んで下さりありがとうございました!