いま企業が採用活動で力を入れているのが、「リファラル採用」です。
「リファラル採用」とは、採用企業が自社の社員等から候補者となる知人・友人を紹介してもらう採用手法です。
詳しくは後述しますが、リファラル採用には採用企業に様々なメリットがあるため、採用している企業も増えてきています。
応募者としてもメリットがあるリファラル採用ですが、選考過程や入社後に気を付けるべきポイントもあります。
わたしは、これまでの転職経験の中で2回リファラル採用によって内定をいただきました。その中で、リファラル採用について色々な気づきや学びがありました。
そこでこの記事では、応募者の目線でリファラル採用のメリット・デメリットと応募者側の対策を解説します。
この記事を読み終えると、リファラル採用のメリット・デメリットが理解でき、リファラル採用で落とされるリスクを回避できる様になります。
それでは、リファラル採用について解説していきます!
リファラル採用とは?
それでは最初にリファラル採用の概要、流れ、採用企業のメリットを簡単に説明します。
リファラル採用の概要
リファラル採用とは、自社の役員・社員を通じて元同僚、知人、友人を紹介してもらう採用手法になります。
企業によっては紹介された人材が採用された場合、紹介者に報奨金を支払う場合もあります。
外資系企業では以前からリファラル採用は一般的ですが、日系企業においてもダイレクト・リクルーティングのひとつとして定着しつつある採用手法です。
ダイレクト・リクルーティングについては、こちらの記事で詳しく解説しています。合わせてご覧ください。
リファラル採用の流れ
リファラル採用の一般的な流れは以下のとおりです。
- 採用企業が募集概要を決定
- 社内で募集概要を発表し、役員・社員に紹介を依頼
- 役員・社員が自分のネットワークにコンタクト
- 紹介された候補者が応募
- 選考プロセス(書類選考・面接)
- 内定・条件交渉
- 入社
リファラル採用:企業のメリット
採用企業がリファラル採用を利用する主なメリットは以下のとおりです。
採用企業のメリット
- 採用コストを抑えられる
- 自社の事を知る役員・社員による紹介なのでミスマッチを回避できる
- 社員の定着率が高まる
- 転職を検討していない潜在層にコンタクトできる
リファラル採用:応募者のメリット
リファラル採用の概要が理解できたところで、次に応募者にとってのメリットを順番に解説していきます。
応募者のメリット
- 未公開求人に出会える可能性
- 書類選考・面接の通過率が高い傾向
- 採用背景・社内の事情を把握できる
- 年齢・転職回数などの懸念要素を払拭できる
メリット① 未公開求人に出会える可能性
特に外資系企業やベンチャー企業に見られる傾向ですが、公募の前に自社のネットワークを利用して候補者にコンタクトする傾向があります。
重要なポジションになるほどその傾向が強くなります。なぜなら重要なポジションになるほど採用の失敗のインパクトが大きいからです。
なので、少しでも失敗のリスクを下げるために、その候補者のことをよく知るルートから推薦してもらうようにするのです。
転職を検討しているひとにとっては、公募でライバルが多い状況を回避して選考に臨むことができるメリットがあります。
メリット② 書類選考・面接の通過率が高い傾向
リファラル採用の場合、採用企業の紹介者によって社風や業務内容とのマッチ度が高いと判断されていることが多いです。
端的に言うと、採用見込みのまったくない知人にわざわざ声をかけないという事です。
書類選考・面接という通常の採用プロセスはありますが、採用企業の社員のお墨付きをもらって応募しているというメリットは大きいです。
また、知人である採用企業の社員から内部事情を聞くことができるため、採用プロセスにおいてはより踏み込んだアピールが可能となります。
メリット③ 採用背景・社内の事情を把握できる
転職サイト経由の応募になると、応募する企業の情報は、その企業が発信している情報か転職口コミサイトから得ることになります。
また、転職エージェント経由の応募の場合は、担当するキャリアコンサルタントからの情報を参考にすることになります。
いずれも実態を把握する目的においては、その企業に勤務する社員の生の声には劣るでしょう。
実際にその企業に勤務する社員に気兼ねなく気になるポイントを確認できることは応募者にとって大きなメリットになります。
メリット④ 年齢・転職回数などの懸念要素を払拭できる
年齢(が高い)、転職回数に対してネガティブな印象をもつ企業は少なからず存在します。
そういった保守的な企業に対して、転職サイトや転職エージェントを通じて応募しても他の候補者と比較され不利になることがあります。
リファラル採用であれば、採用企業の社員である紹介者によってそういった懸念要素をカバーしてもらうことが可能です。
「年齢は少し想定よりも高いが、柔軟性がある人材」、「転職回数が多いのは、引く手あまたの人材だから」といったフォローを入れてもらうことも期待できます。
リファラル採用:応募者のデメリット
リファラル採用のメリットの次は、応募者が気を付けるべきデメリットを順番に解説していきます。
応募者のデメリット
- 不採用・辞退となった場合、紹介者との関係が気まずくなる
- 自分の希望するタイミングで募集が出るとは限らない
- 良くも悪くも紹介者に依存する
- 短期間で離職する場合は紹介者へ配慮が必要
- 転職エージェントのサポートを受けられない
デメリット① 不採用・辞退となった場合、紹介者との関係が気まずくなる
紹介者が採用される可能性が高いと思ってコンタクトしているケースは多いものの、リファラル経由の応募であっても不採用となる可能性はあります。
また、応募はしたものの、自分が思い描いていたキャリアパスではない、現職・他の応募企業の方がベター、という判断で応募を辞退することもあり得ます。
これらの場合、紹介者との人間関係に影響を及ぼす可能性があります。
紹介者も応募者もお互いに事前にこれらのケースを想定しておくことが必要になります。
デメリット② 自分の希望するタイミングで募集が出るとは限らない
リファラル採用の場合、応募者にとっては自分が転職活動をおこなっていない時期に声を掛けられることも多いでしょう。
また、転職活動をおこなっている人にとっては、リファラル採用による募集がどのタイミングで出てくるのか予測することはほぼ不可能です。
いずれの場合も、応募者にとっては予期せぬタイミングで声が掛かって、応募の準備をおこなうことが求められます。
特に転職活動をおこなっていない人にとっては、応募企業のリサーチ、応募書類の準備、面接対策を短期間で行わなければなりません。
デメリット③ 良くも悪くも紹介者に依存する
リファラル採用で紹介者がいることには大きなメリットがありますが、一方でデメリットもあります。
応募前:紹介者から募集ポジションで求められる能力、社内事情等を入手していることが多いかと思いますが、いずれも紹介者のバイアスがかかっていることがあります。
特に社風や人の評価などはバイアスの影響を受けやすい項目となります。
紹介者にとって風通しの良いカルチャーが必ずしも自分と同じ感覚とは限りません。
紹介者からの情報だけでなく、自分のフィルターを通して検討する必要があります。
入社後:良くも悪くも「〇〇さんの紹介」という第一印象をもたれることは認識しておきましょう。
また、入社後は紹介者に依存し過ぎることなく、フラットに人間関係を構築されることをおススメします。
私はリファラル採用で入社した企業で、入社1か月後に紹介者が社長と仲違いして退職してしまった経験があります。
幸い入社後は紹介者に依存することなく同僚との関係構築に務めていましたので大事には至りませんでした。
しかしながら、紹介者に依存することのリスクを実感した出来事だったと思います。
デメリット④ 短期間で離職する場合は紹介者へ配慮が必要
リファラル採用であっても職業選択の自由は尊重されるべきです。
しかしながら、紹介によって入社はしたものの、様々な理由により短期離職を検討する場合もあるかもしれません。
その場合、通常の退職プロセスに加えて紹介者に対する配慮は必要になるでしょう。
残された紹介者に不利益が生じない様に周りの理解を得ることも重要です。
デメリット⑤ 転職エージェントのサポートを受けられない
転職エージェント経由で応募していると、以下のメリットがあります。
転職エージェント経由の応募のメリット
- 応募書類の添削
- 面接指導
- 条件交渉
- 採用企業の客観的な評判
転職エージェントを利用するメリットの詳細はこちらの記事をご覧ください。
リファラル採用による応募の場合、これらのサポートを得ることができませんので、自分でおこなう必要があります。
リファラル採用:落ちる理由とは?
リファラル採用は応募者にとってメリットはありますが、現実には選考で落ちることもあります。
こちらではリファラル採用で落ちる理由を解説します。
- 油断・準備不足
- 紹介者の認識不足
- 社風(カルチャー)とのミスマッチ
- 条件のミスマッチ
落ちる理由① 油断・準備不足
リファラル採用による応募者に対する期待度は採用企業によってばらつきがあります。
面談程度で内定を出すケースから、公募の場合と同様の選考を行うケースまでさまざまです。
後者の場合、面接通過の難易度は通常の応募とほぼ変わりません。
従って、社員の紹介による応募ということで油断して準備を怠ると、普通に見送りの判断となります。
落ちる理由② 紹介者の認識不足
リファラル採用の場合、応募に至るまでは紹介者からの情報に依存することになります。
紹介者が募集ポジションで求められる要件に精通しているとは限りません。
よって、紹介者があなたの経験・スキルを採用企業に正確に伝えられていない可能性もあります。
紹介者からの情報はよくも悪くもその人の理解・認識にかかっていることを認識しましょう。
応募者としては、紹介者から自分のことを採用企業に正確に伝えてくれていると期待しがちですが、採用プロセスの中でしっかりと自分自身で説明する必要があります。
落ちる理由③ 社風(カルチャー)とのミスマッチ
リファラル採用の場合、知人からは「ウチは働きやすい会社だよ!」と言われて打診されるケースがほとんどでしょう。
しかしながら、その知人が働きやすいカルチャーが必ずしも自分がフィットできる環境とは限りません。
リファラルによって応募はしたものの、実際に面接に臨むとカルチャーギャップを感じることもあり得ます。
その違和感は入社後にはストレスとなる可能性があります。
落ちる理由④ 条件のミスマッチ
わたしは2度リファラル採用で内定を頂いたことがありますが、2度とも具体的な条件が提示されたのは、内定確定後でした。
紹介してもらう知人と自分の現在の給与額など生々しい情報を共有していることは少ないかと思います。
なので、紹介者もあなたの現給与を知らずに、ポジションの紹介を行っているケースが多いでしょう。
また、あなたもその知人に「いくら貰ってるの?」と聞きづらいと思います。
その場合、選考が進んだところで初めて採用企業の提示額と自分の希望額のすり合わせが行われますが、ここでお互いの希望条件のミスマッチが生じて破談になる可能性があります。
リファラル採用で落ちないための対策
リファラル採用で落ちる理由を解説しましたので、ここではリファラル採用で落ちないための対策を紹介します。
- 企業研究の深掘り
- 通常の応募と変わらない謙虚さをもつ
- 紹介者にサポートを依頼する
- 印象に残る逆質問を用意する
対策① 企業研究の深掘り
リファラル採用はその企業で働く社員による紹介のため、その社員から外からでは分からない様な情報を得ることができます。
そのメリットを最大限に活かして企業研究の深掘りをしましょう。
わたしがいつも必ず確認することは、「採用企業(所属する予定の部門)が抱えている課題」です。
その課題を解決できるエピソードを用意しておけば、面接の通過率を上げることができます。
対策② 通常の応募と変わらない謙虚さをもつ
リファラル採用では採用企業からの打診からスタートしていることもあって、一般応募の場合と違って油断しがちになります。
採用企業によっては、面談や顔合わせ程度で内定を出すこともあります。
しかしながら、入社時に好印象を持ってもらえる様に、最初から最後まで一般応募と変わらない謙虚さを失わないことをおススメします。
必要なスキル・経験を持ち合わせていても、入社してからの関係構築が本当のスタートであることを意識しましょう。
対策③ 紹介者にサポートを依頼する
応募者にとって採用企業に勤務する知人は最大限活用すべき存在です。
わたしはいつも応募書類の準備・面接対策のために以下の3つのポイントをヒアリングします。
- 面接官が気にするポイント
- 企業が大事にしているカルチャー
- 現在抱えている課題
また、面接後に自分の入社意欲が高い場合は、すぐに紹介者に連絡し、紹介してくれたお礼と具体的なエピソードを交えて入社意欲が高まったことを伝えましょう。
さらに、面接では伝えきれなかったことがあれば、紹介者に伝えてフォローを依頼しましょう。
対策④ 印象に残る逆質問を用意する
一般応募とは違い、リファラル採用ではその企業に勤務する知人から様々な情報を得ることができます。
得られた情報から面接官の印象に残る逆質問を用意しておくと、面接官は面接後に良いディスカッションができた、と印象をもちます。
面接官が意義のあるディスカッションができたと実感すると、あなたと一緒に働くイメージがより一層湧きやすくなるでしょう。
まとめ
以上、今回の記事では応募者の目線で、リファラル採用のメリット・デメリットと応募者側の対策を解説しました。
- 未公開求人に出会える可能性
- 書類選考・面接の通過率が高い傾向
- 採用背景・社内の事情を把握できる
- 年齢・転職回数などの懸念要素を払拭できる
- 不採用・辞退となった場合、紹介者との関係が気まずくなる
- 自分の希望するタイミングで募集が出るとは限らない
- 良くも悪くも紹介者に依存する
- 短期間で離職する場合は紹介者へ配慮が必要
- 転職エージェントのサポートを受けられない
リファラル採用経由の応募は一般応募よりも有利であることが多いですが、内定が確約されているわけではありません。
- 企業研究の深掘り
- 通常の応募と変わらない謙虚さをもつ
- 紹介者にサポートを依頼する
- 印象に残る逆質問を用意する
リファラル採用は、採用企業が力を入れていることもあり、転職を検討しているひとにとっては、ぜひ選択肢に入れたい応募方法です。
しかしながら、リファラル採用ではいつ希望のポジションの募集が開始されるかわかりません。
積極的に転職活動をおこないたい人は、転職エージェントの利用など、他の方法も取り入れることをおススメします。
最後まで読んで下さりありがとうございました!