転職活動で内定前に採用企業や転職エージェントから「リファレンスチェック」を依頼された経験はありませんか?
わたしは初めて外資系企業に転職したときに、最終面接後に採用企業の人事から「リファレンスチェックのために推薦人を2名出してください」と言われ、大変驚いた経験があります。
エンワールド・ジャパン社の調査によりますと、現在採用企業の4割がリファレンスチェックを導入し、そのうち7割の企業が「選考に影響する」と考えています。
リファレンスチェックは外資系企業のみならず、日系企業でも導入する企業が増えています。
わたし自身は、昔の上司や同僚にリファレンスチェックをお願いしたこともお願いされたこともあります。
良いリファレンスをもらえる人脈を持つことは今後の転職活動の戦略において非常に重要になります。
そこで、この記事では日系・外資系企業で10回の転職経験がある筆者が、応募者の目線でリファレンスチェックの目的や対策を解説します。
また、リファレンスチェックを頼める人がいない場合の対応についても触れたいと思います。
この記事を読んで採用企業から依頼される前にリファレンスチェックの対策を行いましょう!
リファレンスチェックとは?
リファレンスチェックの概要と実施状況
「リファレンスチェック」とは、採用企業が応募者の事前同意を得たうえで、応募者の経歴や人柄について、第三者に対してヒアリングを行うことをいいます。
エンワールド・ジャパン社が採用企業に対して実施した調査によると;
- 外資系企業の実施率:58%
- 日系企業の実施率:23%
という実施率になっています。
また、リファレンスチェックをおこなっている企業の約70%が「採用の判断に影響する」と回答しています。
また、エンワールド・ジャパン社の関連会社でリファレンスチェックサービスを提供しているASHIATO(アシアト)が発表した調査によると;
- 人事担当者の84.0%が採用時の経歴・実績確認に不安を感じていると回答
- リファレンスチェックにより、職務経歴や実績の虚偽が発覚したことがある企業は60.0%
- 71.0%の会社でリファレンスチェックの結果が面接時評価とは異なった採否判断に繋がっていると回答
これらの統計から、採用企業にとってリファレンスチェックが採用プロセスで重要であることがお分かりいただけるかと思います。
リファレンスチェックの目的
採用企業は以下の目的でリファレンスチェックを実施します。
- 面接では得られなかった応募者の情報を得たい
- 応募者について第三者から客観的なフィードバックを得たい
- 応募者の経歴・実績を確認したい
- 応募者が採用企業の社風にマッチするか確認したい
基本的には応募書類や面接で得られる情報は限られているため、これらを補完する目的で行われています。
リファレンスチェックの方法
リファレンスチェックは、採用企業または転職エージェントから応募者側にて元上司や同僚など数名の推薦者を指定するよう依頼があります。
推薦者に対するヒアリングは採用企業が直接おこなう場合と転職エージェントや外部の調査代行会社によっておこなわれる場合があります。
調査会社がおこなう場合は、先方から推薦者を指定してくることもあります。
指定された推薦者が採用企業側から電話やメール等を通じて質問に回答する形でおこなわれます。
リファレンスチェックがおこなわれるタイミング
リファレンスチェックは採用企業側にとっても手間と時間のかかるプロセスになります。
外部の調査会社に依頼する場合は費用もかかります。
したがって、候補者が絞られてきたタイミング、つまり、通常は内定を出す直前または最終面接の直前に行われことが多いです。
まれにですが、転職エージェントに登録する段階で数名の推薦者をあらかじめ登録するよう求められる場合があります。
また、わたしのケースでは、推薦者を指定したにもかかわらず、リファレンスチェックが実際には実施されないこともありました。
その際はバックグラウンドチェックも同時に行われていましたので、バックグラウンドチェックの調査結果で満足されたのかもしれません。
リファレンスチェックの質問内容
わたしが応募者、推薦者として経験したリファレンスチェックでは以下の質問を受けました。
- 在籍期間はいつでしたか?
- 役職・業務内容は何ですか?
- どの様な人柄ですか?
- 社内でのコミュニケーションはどうでしたか?
- 所属部門での評判はどうでしたか?
- 長所・短所は何ですか?
- 勤怠の状況はいかがでしたか?
- どの様なマネジメントスタイルでしたか?(管理職の場合)
- 在籍中の主な実績は何ですか?
- 機会があればまた採用したい(一緒に働きたい)と思いますか?
わたしの場合は各質問に対して推薦者のコメントを入れるコメント方式でした。
採用企業の方針や利用するサービスによって、
- 「コメント方式」:推薦人が各設問対してコメントを記載する方式
- 「選択肢方式」:推薦人があらかじめ用意された選択肢から回答を選ぶ方式
- 「電話・オンラインでの聞き取り方式」:推薦人に対して口頭でヒアリングする方式
などの回答方法が採用されています。
応募者として、この様な質問に対して「適切」かつ「ポジティブ」に回答してもらえる推薦者を指定する必要があります。
リファレンスチェックは拒否できる?
応募者は採用企業からのリファレンスチェックの要請を拒否できるのでしょうか?
採用企業は、個人情報保護の観点から応募者の承諾なくしてリファレンスチェックをおこなうことはできません。
したがってリファレンスチェックを拒否すること自体は可能です。
ただし、特に他の候補者(ライバル)がリファレンスチェックに応じている場合、やはり選考上不利になる可能性はあると考えています。
なぜなら採用企業がリファレンスチェックに応じられない以下の様な理由があるのではないか?と考えられてしまうからです。
- 現職・前職の同僚と良好な人間関係を構築できていなかった
- 前職を円満退職できなかった
- 何か選考に不都合な事実がある
- 応募書類に不正確な情報がある
また、個人の信用が重要となる業種では、リファレンスチェックが非常に重要な採用プロセスと位置付けているところもあります。
やはり内定を獲得する戦略上、良いリファレンスを提供してくれる人脈を構築しておくことをおすすめします。
拒否する場合でも、企業に対して誠実かつ透明性を持って対応することが重要です。
適切なコミュニケーションを図り、企業の信頼を損なわないように心がけましょう。
リファレンスチェックを頼める人がいない場合の対策は後ほど解説します。
リファレンスチェックでバレること
リファレンスチェックで転職活動がバレる?
現在の勤務先の上司や同僚を推薦者に指定しない限り、採用企業が現在の勤務先にコンタクトすることはありません。
転職活動がバレる可能性を低減するためには、リファレンスに選ぶ人物を慎重に選ぶことが重要です。
信頼できる前職の同僚や上司、または現職の理解ある同僚など、転職活動を応援してくれる人物を選びましょう。
リファレンスチェックの対象者には事前に連絡を取り、転職活動の事実を把握してもらうことも大切です。
また、採用企業に対してリファレンスチェックを行う際の配慮を求めることも重要です。
採用企業に対し、現職の関係者には連絡しないように依頼しておきましょう。
採用企業は候補者のプライバシーを尊重し、リクエストに応じてくれることが一般的です。
リファレンスチェックで採用企業に何がバレる?
【リファレンスチェックの質問内容】の項目を見ていただければ推薦者による回答内容がお分かりかと思います。
推薦者の質問に対する回答があなたの応募書類や面接での回答と違った場合、採用企業からそれらの正確性が疑われます。
自分が関わっていない案件を自分の実績に含めたりすることはもちろんですが、
- 在籍期間や役職を詐称した
- 部下がいない役職だったのに部下をマネジメントしていたとアピールした
- プロジェクトの「サポート役」だったにもかかわらず「リーダー」だったとアピールした
- 実績の数字をかなり盛っていた
- 上司・同僚とのコミュニケーションに問題があった
- 虚偽の勤務形態を伝えていた
- 部下・同僚に対するハラスメント行為があった
といった事項は、リファレンスチェックによってバレる可能性がありますので注意しましょう。
また、リファレンスチェックでは転職先の社風とマッチするかどうか確認するための質問も用意されることがあります。
その場合、応募者の社内でのコミュニケーション手法やマネジメント・スタイルも聞き取りの対象となります。
リファレンスチェックの結果は、採用判断に大きく影響します。
従って、候補者は事前にリファレンスとなる人物と良好な関係を築き、信頼を得ておくことが重要になります。
リファレンスチェックとバックグラウンドチェックの違いは?
バックグラウンドチェックとリファレンスチェックはよく混同されますが、両者の特徴は以下のとおりです。
バックグラウンドチェック | リファレンスチェック | |
---|---|---|
目的 | 企業が不利益を被るリスクを避けるために、 応募者の経歴に問題がないか確認 |
ミスマッチを避けるために、 応募者の勤務状況・働きぶりを確認 |
実施時期 | 最終面接から内定の間が多い | 最終面接から内定の間が多い |
調査項目 | 学歴・職歴・資格 反社チェック 制裁リストチェック ネガティブニュース 訴訟履歴 破産履歴 |
勤務状況(元上司・同僚へのヒアリング・アンケート) |
調査の実行者 | 調査会社 | 採用企業または調査会社 |
バックグラウンドチェックが実施される場合、そのいち項目として、リファレンスチェックは特定の項目を調査するため行われます。
採用企業によってはリファレンスチェックのみ行い、バックグラウンドチェックは行わないケースもあります。
バックグラウンドチェックについてはこちらの記事(バックグラウンドチェックとは?リファレンスチェックとはどう違う?)で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
リファレンスチェックの対策
- 勤務先でリファレンスチェックに対応してくれる人脈を確保する
- 転職エージェントを利用する
- 応募書類や面接では実績を正確にアピールする
リファレンスチェックの対策① 勤務先でリファレンスチェックに対応してくれる人脈を確保する
リファレンスチェックの目的だけではないですが、勤務先で上司・同僚や取引先と信頼関係を構築できればそれがキャリアにおける財産となります。
できれば3名以上はリファレンスに応じてくれそうな人脈を確保しておくことをおすすめします。
本人としてはリファレンスチェックに応じたい意思があっても、勤務先のルールでリファレンスに応じることがNGの場合もあるからです。
また、外資系企業での就業経験のない方だとリファレンスチェックを経験したことがないこともあり得ます。
依頼する人に対しては、リファレンスチェックの実施内容をあらかじめ伝えて心理的なハードルを下げておきましょう。
さらに、最近の傾向として、リファレンスチェックの回答者を3名出して欲しいと依頼してくる企業も増えています。
また、ギブ&テイクの精神で、自分もリファレンスチェックに応じることをオファーしましょう。
もし勤務先での協力者の確保が難しい場合は、取引先や業務委託先などの知人に範囲を広げてみましょう。
リファレンスチェックの対策② 転職エージェントを利用する
リファレンスチェックの対応方法については、やはり豊富な情報や実績をもつ転職エージェントのサポートが頼りになります。
過去の事例から応募者としてどうやって対応するのがベストなのかアドバイスをもらいましょう。
転職エージェントには応募のサポートから待遇の交渉まで行ってもらえますので、可能なかぎり転職エージェントを通じて応募しましょう。
次のステップに進めるかどうか意見が割れていた候補者がいました。
こちらからリファレンスを求めていなかったのにもかかわらず、応募者の転職エージェントから元上司によるリファレンスが提出されて選考が進んだケースもありました。
第三者による推薦というのは思いのほか効果があるものです。
こういった戦略的なアプローチは転職エージェントを利用する大きなメリットになります。
リファレンスチェックの対策③ 応募書類や面接では実績を正確にアピールする
リファレンスチェックの目的のひとつは、書類や面接でアピールされた応募者の実績や業務範囲が正しいのかを確認することです。
あまりに現実とかけ離れたアピールを行うとリファレンスチェックによって正確性、信頼性を疑われます。
採用企業に対するアピールは大事です。
しかしながら、実績の数字を改ざんしたり、組織や他人の実績を個人の実績を置き換えたりすることは避けましょう。
また、自分の実績はSTAR形式(状況・課題・行動・結果)でまとめておくことをおすすめします。
STAR面接についてはこちらの記事で詳しく解説しています↓
リファレンスを頼めない場合の対処法
- 他の方法で採用企業の不安を払拭する
- 体験入社を申し出る
- 入社後にリファレンスチェックを実施してもらう
- LinkedInの「スキル&スキル推薦」を活用
リファレンスを頼めない場合の対処法① 他の方法で採用企業の不安を払拭する
現在の勤務先の在籍確認であれば、他の書類や記録を提出することで採用企業の不安を払拭できる可能性もあります。
また、仕事の実績であれば、セミナーでの登壇記録、業界紙、ネット上の情報などで公開されているものがあれば、客観的な資料として提出することもできます。
リファレンスを頼めない場合の対処法② 体験入社を申し出る
既に説明したとおり、リファレンスチェックの目的は、入社後のミスマッチを避けることです。
従って、実際に転職先での業務を実際に体験したり、同僚となる人たちと実務上のコミュニケーションを取ることによって双方のマッチ度をある程度測ることができます。
リファレンスを頼めない場合の対処法③ 入社後にリファレンスチェックを実施してもらう
これまでの転職活動において、転職先へ入社した後にリファレンスチェックが実施されたこともありました。
この場合は、前職の退職時に問題があった場合を除き、在籍中は依頼できなかった直前の勤務先の上司・同僚に依頼することが可能です。
通常転職先では試用期間があることが一般的ですので、入社後にリファレンスチェックを依頼することもひとつの方法として考えられます。
リファレンスを頼めない場合の対処法④ LinkedInの「スキル&スキル推薦」を活用する
ビジネスSNSのLinkedInでは、自分のプロフィールと職務経歴を掲載できますが、その中に「スキル&スキル推薦」という項目があります。
この項目では自分のスキルをタグとして登録することができ、また他の登録者から登録スキルの推薦を受けることができます。
リファレンスチェックまで進んでいる候補者の場合、採用企業が応募者のエゴサーチを行っている可能性が高く、ネット上の検索であればLinkedInの情報も表示されます。
採用企業や転職エージェントが実施するリファレンスチェックには及ばないのは事実でしょう。
しかし、少なくとも第三者からお墨付きのスキルを有していることをSNS上でアピールすることができます。
まずは自分から他の登録者のスキルを推薦し、自分の推薦をしてもらえないか打診してみましょう。
LinkedInの効果的な利用について学びたいひとにはこちらの書籍をおススメします。
採用企業側、転職希望者側、両方の活用方法が具体的に解説されているため、利用するうえで大変参考になります。
リファレンスチェック:まとめ
実施している企業の約70%が採用の判断に影響すると回答しているとおり、リファレンスチェックは採用プロセスの中で重要な位置づけとなっています。
応募者としては:
- 勤務先でリファレンスチェックに対応してくれる人脈を確保する
- 転職エージェントを利用する
- リファレンスを頼めない場合:他の方法を相談する
- 応募書類や面接では実績を正確にアピールする
- LinkedInの「スキル&スキル推薦」を活用する
といった対策をおこないましょう。
また、リファレンスチェックは採用企業側の目的でおこなわれるものです。
しかしながら、良い推薦者がいる場合は、応募者にとっても「第三者のお墨付き」という重要なツールとなります。
キャリアは勤務先ごとで途切れるものではく、継続していくものという意識をもって普段から信頼できる人脈を構築し、むしろリファレンスチェックを戦略的に活用していきましょう!
筆者おすすめの転職エージェント
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わたしが実感しているエンワールドのメリットは以下の5つです。
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- 他の外資系特化型エージェントと比較してキャリアコンサルタントの質が高い
- 優良・高収入の案件が多い
- ミドル・シニア層の案件も比較的多い
最後まで読んで下さりありがとうございました!」