転職活動をしていると、即戦力としての活躍を期待され、同業他社からの求人を紹介されることがあります。
わたしはこれまで11社を経験していますが、実際にそのうち9社が同業の企業になります。
同業他社への転職は即戦力として活躍しやすい等、様々なメリットもありますが、実は同業ならではの気を付けるべきポイントもあります。
そこでこの記事では、わたしのこれまで9社の同業企業に在籍した経験から、同業他社への転職がバレる理由とトラブルを避けるコツを解説します。
転職後の活躍という点で、同業他社への転職はキャリアの重要な選択肢のひとつです。
この記事を読んで、同業他社への転職で無用なトラブルを避けるようにしましょう。
それでは、同業他社への転職について解説していきます!
同業他社への転職のメリット
それでは、まずは改めて同業他社に転職するメリットを整理します。
- 書類選考・面接で有利
- 入社後すぐに戦力になれる
- 業界ネットワークを活かせる
- 専門性に磨きがかかる
①書類選考・面接で有利
言うまでもなく、これまでに応募企業と同じ業界での業務経験があれば、他の候補者よりも面接官から好印象を得やすいでしょう。
採用する側が入社後の活躍をイメージしやすいからです。
面接官が自身の業界での経験しかない場合、異業種からの応募者の経歴や定着性を適切に評価することが困難な場合もあります。
その結果、選考過程において、思いもしない先入観があったり、過小評価・過大評価につながるおそれもあります。
私はエンタメ業界在籍時にヘルスケア業界の企業に応募したことがあるのですが、面接の際に、
「エンタメ企業の方ということで、どんな個性的な方が来るのかと思っていましたが、普通の方で安心しました。」
と言われたこともあります・・・
②入社後すぐに戦力になれる
異業種からの転職者と比較し、同業からの転職者は商材・業界の仕組み等の理解度が高いので、入社後早期に活躍することが可能です。
業界の慣習や用語にも精通しているので、入社後間もないタイミングであっても会議や資料の理解度も高く、前職での経験を活かした提言を行うことも可能です。
また、転職先で外部の取引先を担当する場合は、取引先に自己紹介する際に前職での経験を伝えれば、安心感を与えることもできます。
③業界ネットワークを活かせる
同業からの転職者は、前職でのネットワークを活用して転職先に新たな付加価値を提供することも可能です。
たとえば、転職先がこれまでリーチできていなかった領域の取引先を開拓・紹介すれば、わかりやすい評価材料になり、一気に社内での存在感も増すことになります。
④専門性に磨きがかかる
同業界での企業であっても、企業によって規模・強み・弱み・それぞれの特徴があります。
同業界で様々な企業を経験することで、その業界における専門性が磨かれることになります。
私はエンタメ業界で長く仕事をしていますが、音楽、映画、アニメ、ゲームの企業を渡り歩き、それぞれの企業での経験を転職先の企業で活かしてきました。
さらに、同業界で日系企業と外資系企業に在籍すれば、より幅広い経験を積むことが可能です。
同業他社への転職ってどうしてバレる?
同業他社への転職はバレるのでしょうか?
私の実体験から言いますと、ほぼバレると思っておいた方が良いです。
同業他社に転職すると、なぜその事実はどうやってバレるのでしょうか?
実際にわたしがこれまでの転職で実際に経験した・目にした事例を具体的に紹介します。
- 元同僚からバレる
- SNSでバレる
- 取引先からバレる
①元同僚からバレる
転職が決まると、退職前に現職の同僚に転職先を伝えてしまいたくなるものです。
しかし、転職関連の情報は間違いなく(悪気があってもなくても)社内で拡散されると考えましょう。
わたし自身も、上司や同僚から転職先について聞かれることもあります。
その場合、私はいつも「有難いことにいくつかの会社からお話を頂いておりまして、現在検討中です」と伝えるに留めています。
また、元同僚が、自分の転職先の取引先や関連会社に転職する可能性もあります。
さらに、転職先の同僚が自分の前職に転職する可能性もあります。
同業界で転職するケースは多いので、業界内で転職しているのは自分だけではないことを意識することが重要です。
②SNSでバレる
ビジネスSNSのLinkedInや名刺アプリのEight等を使用している方は、転職後に自分のプロフィールを転職先の情報にアップデートされると思います。
これらのSNSでつながっている人にはアップデートの情報が通知されます。
また、プロフィールが検索可能な設定になっている場合はネットワーク以外のユーザーでも転職先を情報を知ることが可能になります。
私の場合は、すぐにでも転職の挨拶をしたい人は個別に連絡し、SNS上の情報更新は転職後しばらく時間が経過してから行う様にしています。
さらに、転職先で重要な役職に就く場合は、転職先が自社のホームページや業界メディアであたなの入社の事実を公開する場合もありますので注意が必要です。
③取引先からバレる
同業退社への転職は、業界のネットワーク(人脈)が活用できるメリットがあります。
いっぽう、業界のネットワークから同業他社への転職がバレるデメリットもあります。
転職先で取引先と挨拶する機会のあるポジションの場合、その取引先から前職の企業に伝わる可能性があります。
同業他社への転職で気を付けるべき競業避止義務とは?
①競業避義務とは?
「競業避止義務」とは、
「在職中や退職後に競合他社に勤務しないこと、役務を提供しないこと」
を意味します。
競業避止義務が課されている場合、就業規則や入社時・退社時の誓約書に「在職中および退職後〇年は同業他社に勤務しないこと」といった文言が入っていることが一般的です。
私がこれまで在籍した企業では「退職後1年」と定めているところが多かったです。
自社の社員が同業他社に転職する場合、企業は、自社の秘密情報(技術、取引先の情報)やノウハウが他社に流出し、不利益・損害を被るリスクを避ける必要があります。
②職業選択の自由との関係
いっぽう、多くの企業が競業避止義務を課しているにもかかわらず、なぜ多くのビジネスパーソンが実際に同業他社に転職しているのでしょうか?
実際に私もこれまで同業他社に何度も転職しています。
それは、憲法で「職業選択の自由」が保障されているからです。
日本国憲法第22条第1項:何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。
勤務先に不利益を与える様な行為がない限り、同業他社であっても転職先が制限されることはありません。
ただし、無用なトラブルを避けるためにも、次に説明する「トラブルを避けるコツ」をチェックしてください。
③競業避止義務の有効性が認められるケース
いっぽう、同業他社への転職において、勤務先の競業避止義務の有効性が認められるのはどの様なケースでしょうか?
判例では個別具体的な要素が判断材料となっていますが、
- 経営上重要な情報・案件を取り扱う重要な役職に就いている
- 義務を課された勤務先から労働市場の相場以上の高額な報酬をもらっている
- 競業避止の期間が1年以内
- 競業避止の業務範囲が合理的に限定されている
- 競業避止義務について企業側と合意が成立している
場合などは認められているケースもあります。
- 同業他社への転職は、憲法で「職業選択の自由」が保障されているため、基本的に問題ない。
- ただし、現職で重要な役職に就いている場合や極秘情報を扱っている場合は注意が必要。
同業他社への転職でトラブルを避けるコツ
- 秘密情報の取り扱いに注意する
- 円満な退職を心がける
- 退職前に転職先の情報を共有しない
- 引き抜きは慎重に
- 転職エージェントを利用する
①秘密情報の取り扱いに注意する
企業が従業員に競業避止義務を課すのは、情報漏えい等により自社が不利益を被ることを避けるためです。
転職する側としては現職のノウハウを活かせるから同業他社に転職したいと考えると思います。
しかしながら、現職のデータは秘密情報であるかどうかを問わず持ち出した形跡を残さないことが重要です。
警察庁のまとめによると、2022年に警察が不正競争防止法違反で検挙した数が29件となり、過去最多となりました。
背景には転職による人材の流動化が進むにつれて、転職の際に元勤務先のデータを持ち出すケースが増えていると考えられています。
某大手通信会社の社員が同業他社への転職時に自社の情報を持ち出した際には、不正競争法違反の罪で懲役と罰金刑の判決が下りました。
さらには前職の企業が転職先の企業と元社員を相手に10億円の損害賠償を求めています。
本件は重要な技術情報の持ち出しでしたが、たとえ重要な情報ではなくても、データを持ち出したことにより転職先でのキャリアに傷がつくリスクがあることを意識しましょう。
②円満な退職を心がける
就業規則等で同業他社への転職を禁止していても、情報の持ち出しや引き抜き等の会社側の損害がない限り、実際には円満な退職をした社員に対して前職の企業が実際に何らかの措置を講じることはほとんどありません。
円満退職のコツ
- 出社最終日まで手を抜かない
- 引継ぎは求められている以上に丁寧に行う
- 同僚(特に上司)・会社に対する愚痴を言わない
自社に情報漏えい等の不利益がない限り、会社側にとっては、退職者の動向をチェックするリソースも時間を費やすメリットがないのです。
退職時に問題を起こしていなければ、会社側も後任の採用や入社対応に専念されているのが実態ではないでしょうか。
円満に退職するコツは以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
③退職前に転職先の情報を共有しない
転職する際には、現職・転職活動からの解放感、転職先への期待感などからつい同僚に転職先について伝えたくなるものです。
しかし、そこはぐっとこらえて退職前に転職先について語るのは控えることをおススメします。
同業他社への転職であることが退職前に分かると、必要以上に警戒されます。
さらに転職先に関してネガティブな事を言われたり、最悪の場合、転職先にあらぬ悪評を伝えられる可能性もあります。
また、同僚の中には、嫉妬や裏切られたと感じる人もいる可能性があります。
これまでに重要な会議に参加している場合は、退職の意思表示をした後に、上司に会議への参加は控えた方が良いか確認しましょう。
そういった姿勢を見せることで、会社側に対して情報管理の意識が高い人だという印象を持ってもらえます。
④引き抜きは慎重に
転職後に前職の元同僚を転職先に招きたいということもありえると思います。
転職先のニーズ・カルチャーと元同僚のスキル・経験を知っている立場からすると、マッチ度の高い紹介が可能であると考えられます。
しかしながら、前職の企業から元同僚を勧誘する行為が就業規則や誓約書等で禁止されていないか必ず確認しましょう。
規則上の縛りがなかったとしても、前職の企業からクレームを受ける可能性もありますので、慎重に進める必要があります。
自分がどの様な義務を前職から課されているか整理して、勤務先の人事部門や法務部門と相談のうえ検討することをおススメします。
⑤転職エージェントを利用する
日々様々な採用企業と転職希望者をサポートしている転職エージェントには豊富な事例・ノウハウが蓄積されています。
同業他社への転職においても、これまでの多くの事例から実践的なアドバイスを受けることができます。
現職の上司への退職の申し出の方法や伝えるべき情報・伝えない方が良い情報等も相談することができます。
特に初めて転職をする方は、転職エージェントの利用をおススメします。
同業他社への転職:まとめ
以上、今回の記事では同業他社への転職について解説しました。
同業他社への転職は確かにメリットもありますが、気を付けるべきポイントもあります。
転職後に前職の企業から訴えられる可能性もありますので、異業種に転職する場合以上に注意が必要です。
- 秘密情報の取り扱いに注意する
- 円満な退職を心がける
- 退職前に転職先の情報を共有しない
- 引き抜きは慎重に
- 転職エージェントを利用する
同業他社への転職は、これまでのスキルや経験を活かしやすいことから、待遇アップにつながりやすい大きなメリットがあります。
同業他社への転職で不安を感じる方は、豊富な事例・ノウハウが蓄積されている転職エージェントを利用することをおススメします。
円満に同業他社に転職できれば、転職先において前職の企業ともポジティブな関係を維持したり、新たな協業の機会を創ることも可能です。
この記事がみなさんのキャリアアップのためにご参考になれば幸いです。
最後まで読んで下さりありがとうございました!