転職活動を開始するときに選択肢としてまず思い浮かぶのは同じ業界の企業でしょう。
同じ業界での転職であれば、これまでに培った直接活かせる経験とスキルがあるため、即戦力としての活躍が期待できます。
いっぽう、様々な事情や理由で「異業種への転職」を検討する選択肢もあります。
私はこれまで10回転職していますが、これまで2回異業種の企業に転職しました。
より将来性の高い異業種での経験を積みたいと考えたからです。
しかしながら、そのうち1回は完全に失敗と言わざるを得ない転職となってしまいました。。。
失敗の原因は、同業種への転職以上に注意しなければいけないポイントがあったにもかかわらず、自分の見立てが甘かったからでした。
そこでこの記事では、これまでの私の経験から、異業種への転職の難しさと失敗しないコツについて解説します。
この記事を読めば、異業種への転職で失敗しないコツがわかるようになりますので、ぜひ最後までお付き合いください!
- 異業種への転職のメリット
- 異業種への転職のデメリット
- 異業種への転職が難しい理由
- 異業種への転職で失敗しないための7つのコツ
それでは、異業種への転職について解説していきます!
異業種への転職のメリット
それでは、まずは簡単に異業種への転職のメリットについて説明します!
- 今後成長する業種への転身
- 待遇の改善
- スキルアップの機会
①今後成長する業種への転身
いま勤務している業界の将来性に不安を感じているひとにとっては、成長している業界への転職は大きな動機となりえるでしょう。
成長していない業界では、衰退している市場におけるシェアの奪い合いで疲弊している企業も多いです。
その様な環境では待遇の改善もキャリアアップも困難であると考えられます。
逆に成長している業種であれば、将来性も含めて現在の業種よりも待遇やキャリアアップの可能性も高まります。
②待遇の改善
ビジネスパーソンの待遇は個人のスキル・経験と業界・企業の利益率で決まります。
どれだけ在籍企業で成果を出しても、その企業の利益以上の報酬を出すことは不可能でしょう。
求められるスキル・経験は変わらなくても、利益率の高い業界や成長している業界の企業に転職することで、待遇の改善が可能です。
この様な好調な業界は、人材の獲得に積極的で、より高い報酬を提示することができるからです。
報酬が、
利益率の高い業界での「普通の成果」 > 利益率の低い業界での「突出した成果」
ということも十分ありえます。
③スキルアップの機会
異業種での経験は、スキルアップの機会となります。
これまでとは違った業界での経験を積むことで新たなスキルや知見を身に付けることができるからです。
特に成長している業界でスキルアップすることができれば、自分の市場価値も向上し、その後もキャリアパスにおいても選択肢も広がります。
異業種への転職のデメリット
それでは次に異業種への転職のデメリットを説明します。
- 経歴がリセットされる
- ミスマッチが起こりやすい
- これまでの人脈が活かせない
①経歴がリセットされる
異業種に転職した場合、これまでの実績はリセットされ、ゼロからのスタートになります。
これまでの実績に依存することなく、その業界で新たにスキル、経験を構築していく必要があります。
特にこれまで長く違う業界にいた場合、そのハードルは高くなります。
また、転職後は、社内・社外でその業界の経験者たちと渡り合っていくことになります。
②ミスマッチが起こりやすい
これまで経験していた業界であれば、その業界の特徴やリスクを把握しています。
そのため、同業界の知見をもって転職先の企業の評価の精度も高くなります。
いっぽう、異業種の場合、転職先の企業の評価は一般に公開されている情報や求人票の情報に依存することになります。
こういった情報は採用企業側にとって都合の良いものが多くなる傾向にあります。
また、転職する側も良い評判ばかりを目にしてバイアスがかかり、転職先を過大評価してしまうこともあります。
表面的な情報で転職を決断してしまうと、実際に入社したときに「自分のイメージと違った・・・」というミスマッチが起こりやすくなります。
③人脈の再構築が必要となる
みなさんの現職における自分の成果は、果たして自分のスキル・経験のみによるものでしょうか?
いまスムーズに業務が遂行できているのは、これまで構築してきた人脈によるところも多少はあるはずです。
ビジネス上の課題やトラブルを社内・業界の人脈によって解決したこともあるかも知れません。
異業種に転職すると、この様な人脈という財産を未経験の異業種で再度一から構築していく必要があります。
このデメリットの影響は、役職が上になればなるほど大きくなることも注意が必要です。
異業種への転職が難しい理由
次に異業種への転職が難しい理由について説明します。
- 業界特有のカルチャーへの適応
- 業界経験者との競争
- 「未経験者歓迎」のワナ
①業界独特のカルチャーへの適応
同業界の他社への転職でも、社風・社内慣習の違いで入社後に苦労することはよくありますが、異業種の場合、その難易度は増すことになります。
私はエンタメ業界とヘルスケア業界で同じ職種での就業経験があります。
同職種での転職だったにもかかわらず、転職先(ヘルスケア)の業界慣習、求められる業務内容、適用される法令・規制等は大きく異なっており、慣れるのに大変苦労しました。
また、わたしはマネージャー職として採用されましたが、他の部門の業界経験の長いマネージャーたちと協業するにあたって、経験値の差がかなり大きいと感じました。
ベストは尽くしましたが、ヘルスケアの業界にこのまま居続けても期待を超える成果を出すことはできないだろうと判断し、結局入社して半年後にエンタメ業界に戻る決意をしました。
現職の業界と転職先の業界の違いには注意が必要で、様々な観点から比較することが求められます。
②業界経験者との競争
異業種の企業に転職すると、その業界で既に経験を積んでいる社内・社外の関係者と渡り合うことになります。
社内においては、昇進や重要なプロジェクトに参加する権利を社内の業界経験者と争うことになります。
社外においては、競合他社の業界経験者とのコンペや交渉を行うことになるでしょう。
異業種への転職が難しいのは、転職後の活躍という点において、業界経験者との間でこういった業務経験上のハンデがあるからです。
③「未経験者歓迎」のワナ
異業種から応募する場合、「未経験者歓迎」という条件はとても有り難く感じるでしょう。
ところが、わたしのこれまでの転職経験から、「未経験者歓迎」には応募者と採用企業との間で以下のような認識のギャップがあると実感しています。
未経験者であることを分かってて採用しているから入社後は手取り足取り教えてくれるだろう!
手取り足取り教える時間も人手もないし、マニュアルを用意しておけば自力で早期にキャッチアップしてくれるだろう!
実態として、早いペースで物事が動くビジネスの現場で、「業界未経験なのでわかりません・できません」という言い訳が許される期間は長くはありません。
特に管理職のポジションとなると、業界に慣れることにマネジメント業務が加わるので難易度が高くなります。
仮に転職エージェント経由で応募していた場合、転職エージェントは、紹介した人材が入社すれば報酬が発生するので、彼らの仕事はそこで終わりです。
転職エージェントが入社後の定着・活躍まで真摯に考慮してくれるとは限りません。
転職エージェントを経由した応募であっても、入社後のリスクについては自己責任で最終判断することになります。
異業種への転職で失敗しないための7つのコツ
ここまで異業種への転職のメリット、デメリット、難しい理由について説明しました。
ここでは、「異業種への転職で失敗しないための7つのコツ」を説明します。
- 転職理由を深堀りする
- 業界研究を徹底する
- ポータブルスキルをアピールする
- 関連性のない経験・スキルはアピールしない
- 業種未経験のハンデを克服するプランを示す
- 条件を妥協する
- 転職エージェントを活用する
①転職理由を深堀りする
異業種への転職では様々な難しさとデメリットがあることを説明しました。
その難しさとデメリットがある上で、なぜあえて異業種への転職が必要なのか自分の中で深掘りしておきましょう。
転職はそもそも同業種・同職種であってもリスクのある行為です。
異業種となるとそのリスクも高くなり、転職後に想定していなかった困難に直面することもあるでしょう。
その場合、なぜ異業種への転職をするのか、という深掘りを行い、転職の軸と目的を明確にしていれば、この様な困難にも冷静に対処することができます。
②業界研究を徹底する
採用企業に応募する場合、応募先企業の研究を行いますが、異業種の場合は、それに加えて業界の研究も必要となります。
業界研究が必要な理由は以下の3つです。
- その業界が自分がキャリアアップ、スキルアップできる環境なのか確認するため。
- 面接で業界研究を行なっていることをアピールするため。
- ミスマッチを防ぐため。
業界研究の項目は、業界の規模、主要プレイヤー、成長性、利益率、外交・法令等の影響度などが挙げられるでしょう。
業界研究の方法は、応募企業に知人がいれば、ヒアリングさせてもらうのがベストです。
しかしながら、なかなかピンポイントでその様な知人がいることも稀かと思います。
応募企業に知人がいない場合は、応募企業の業界の知人を探してみましょう。
応募企業の内情まではヒアリングできませんが、同業界の人であれば、以下の項目は確認することができます。
- その業界における応募企業の立ち位置・評判
- その業界の将来性
- その業界で求められるスキル・人物像
- その業界特有のリスク
もし、応募企業の業界にも知人がいない場合は、その業界をターゲットにしたセミナーや見本市に参加してみることもおススメします。
③ポータブルスキルをアピールする
異業種からの応募の場合、同業種からの応募者と比較されると、その業種の経験・スキルではどうしても見劣りしてしまいます。
同業種経験者とのハンデを克服するには「ポータブルスキル」をアピールする必要があります。
「ポータブルスキル」とは、在籍する勤務先や業種を超えて活用できるスキルをいいます。
ポータブルスキルの例
- 情報収集能力
- 問題解決能力
- コミュニケーション能力
- マネジメント能力
厚生労働省が以下のサイトでポータブルスキルの見える化ツールを公開していますので、ぜひ一度チェックしてみてください。
④関連性のない経験・スキルはアピールしない
特にミドル層以上の応募者の場合、これまで在籍した業界における経験・スキルをアピールする場合は注意が必要です。
異業種の転職先においても活用できる経験・スキルであれば良いですが、関連性のない経験・スキルはまったく評価されない可能性が高いです。
なぜなら、採用担当者、面接官が異業種におけるその経験・スキルを適正に評価できないからです(逆に自分の知らない領域を延々と説明されて、心が離れていくリスクすらあります)。
応募書類・面接の貴重なスペース・時間は、より有意義なアピールのために取っておきましょう。
⑤業種未経験のハンデを克服するプランを示す
業界未経験者を採用する場合、採用担当者の関心は、「どうやって、どの位の期間で業界未経験のハンデを克服してくれるのか」です。
中途採用の場合、基本的に即戦力として早急に活躍することが期待されます。
採用する側が研修やOJTなどの取り組みは用意していることも考えられます。
しかしながら、まずは自分で業界未経験のハンデを克服するプランを持っていることを応募書類や面接で示しましょう。
例えば、その業界特有の資格などがある場合は、その資格取得のために学習を行なっていることをアピールできます。
資格の受験日が決まっている場合には、資格の取得予定日もあわせて伝えておきましょう。
⑥条件を妥協する
衰退・成熟している業界から今後の成長が期待できる業界へキャリアチェンジする場合は、「多少」の条件の妥協も検討してみましょう。
業界未経験者ということで、多少の条件を妥協することで採用される可能性が高まる可能性があります。
入社時の待遇が一時的に悪化したとしても、今後の業界の成長や自身の貢献度によって、将来的には取り返せる可能性があります。
現状と将来性を比較して、異業種への転職のメリット・デメリットを自分の中で整理してみましょう。
ただし、転職後に様々なギャップを感じた時に、雇用条件の妥協はボディブローのように効いてきます。
「待遇を妥協してまで転職したのに・・・」とついネガティブに感じてしまうものです。
条件を妥協する場合には、転職先への期待値をあまり上げ過ぎないように注意が必要です。
⑦転職エージェントを活用する
異業種への転職の場合、自分の力だけでは収集できる情報に限界があります。
特に募集企業の内部事情や求人票には記載されていない採用背景等を知ることは困難です。
転職エージェント経由で応募した場合、担当のキャリアコンサルタントからこの様な情報を入手することが可能です。
また、異業種からの応募のハンデを補う推薦文を書いてもらったり、雇用条件の合理的な妥協点を見極めるサポートもしてもらえます。
異業種への応募は、転職エージェントを活用しましょう。
一点、注意点としては、転職エージェントの最大の興味は自社が紹介した人材が「採用」されることです。
採用後に転職先で実際に「定着・活躍」できるかどうかは、やはり自分自身で深掘りした分析が必要であることに変わりはありません。
異業種への転職:まとめ
以上、この記事では、異業種への転職の難しさと失敗しないコツについて解説しました。
異業種への転職が難しい理由は以下の3つです。
- 業界特有のカルチャーへの適応
- 業界経験者との競争
- 「未経験者歓迎」のワナ
また、異業種への転職で失敗しないためのコツは以下の7つです。
- 転職理由を深堀りする
- 業界研究を徹底する
- ポータブルスキルをアピールする
- 関連性のない経験・スキルはアピールしない
- 業種未経験のハンデを克服するプランを示す
- 条件を妥協する
- 転職エージェントを活用する
異業種への転職は同業種への転職と比較すると確かに難易度が高くなります。
しかしながら、長いキャリアにおいて、いま就労している業界がいつまでも安泰であるとは限りません。
充実したキャリアを歩むためには、転職市場の動向を常にチェックしながら、自分の市場価値をアップデートし続けることが重要です。
異業種への転職を選択肢に入れることは、キャリア上の機会を増やすことにつながります。
もし異業種への転職を検討することになったら、この記事で説明した7つのコツをぜひ実践してみてください。
この記事が少しでも参考になれば幸いです。最後まで読んで下さりありがとうございました!