応募企業から「バックグラウンドチェックを実施します」と言われた経験はありますか?
わたしはこれまで10回転職していますが、外資系ヘルスケア企業に応募した際にバックグラウンドチェックを経験しました。
その時に初めて「バックグラウンドチェック」というプロセスを経験したので、非常に戸惑いましたし、「何を調べられるのだろう・・・」、「不採用になったらどうしよう・・・」と不安に感じました。
そこでこの記事では、わたしの経験からバックグラウンドチェックの内容について解説します。
この記事を読めば、バックグラウンドチェックの概要と対処法について理解できるようになります。
万が一バックグラウンドチェックが実施されても、冷静に対応できるようにこの記事を読んで準備しておきましょう。
バックグラウンドチェックとは?
転職活動における「バックグラウンドチェック」とは、
採用企業が採用を検討している応募者の経歴・身辺情報をチェックすることです。
企業がある取引先と取引を開始する際に、その取引先が財務的・社会的に問題ない企業かチェックすることが一般的です。
バックグラウンドチェックは、そのチェックを応募者に対して行うこと、と考えればわかりやすいかもしれません。
特に、日本の法律では、いったん従業員を採用してしまうと解雇が非常に難しいことが背景にあります。
詳しくは後述しますが、バックグラウンドチェックは、採用企業が調査会社に依頼しておこなうことが一般的です。
また、応募者に対しては、学歴、経歴、保有資格を証明する書類を提出させることもあります。
以前は外資系企業や信用が重視される一部の業界のみで実施されていましたが、最近はバックグランドチェックを導入する企業も増加傾向にあります。
バックグラウンドチェックの目的
採用企業がバックグラウンドチェックを実施する目的は次の2つです。
- 採用企業と応募者のミスマッチを防ぐこと
- 採用企業に不利益をもたらす可能性のある人材を見抜くこと
特に、信用が重視される業界や役員・管理職の採用では、採用の失敗によるインパクトも大きくなります。
従って、採用企業には、バックグラウンドチェックによって、これらのリスクを軽減したいという狙いがあります。
業界や企業によって、バックグラウンドチェックの重要度は異なります。
しかし、バックグラウンドチェックを実施する企業は、少なくとも採用したい候補者として、経歴を詐称したり、反社会勢力の一員だったり、国内・国外の制裁リストに載っている人物は回避したいと考えているでしょう。
バックグラウンドチェックの実施方法と調査項目
さて、バックグラウンドチェックの目的が理解できたところで、次にバックグラウンドチェックの実施方法と調査項目を説明します。
バックグラウンドチェックの実施方法
バックグラウンドチェックは以下の流れで実施されます。
- 採用企業が応募者からバックグラウンドチェックの同意を取得。
- 採用企業から調査会社に対して応募者のバックグラウンドチェックを依頼。
- 調査会社がバックグラウンドチェックを実施。場合によっては調査会社から応募者に経歴に関する資料の提出などを求める場合もある。
- 調査会社が応募者に関する調査結果をまとめて、採用企業に提出。
- 採用企業が応募者の調査結果をレビューし、内定(オファー)を出すにあたって問題となる様な項目がないか確認。
バックグラウンドチェックは、採用企業にとっても費用、手間、時間がかかる作業になります。
従って、通常は採用候補者が絞りこまれた段階、つまり最終面接の前か最終面接後から正式な労働通知書発行までの間に実施されます。
その際には、採用企業の代理で、First Advantageという調査会社からコンタクトがあり、指定されたWebサイト上の入力フォームから学歴、職歴等の必要項目を入力しました。
その際にエビデンス(証拠)として、卒業証明書のアップロードも求められました。
何か資格をお持ちの場合は、保有している資格の証明書をアップロードすることも求められます。
手元にない場合は取得する時間も必要となりますので注意しましょう。
バックグラウンドチェックの調査項目
調査項目①学歴・職歴・保有資格
履歴書・職務経歴書に記載されている情報が正しいかチェックします。
応募者から提出してもらう卒業証明書や資格証明書、過去の在籍企業への照会等によって確認します。
調査項目②勤務状況(リファレンスチェック)
現職、前職の上司や同僚等からのヒアリングにより、応募者の勤務状況を確認します。
バックグラウンドチェックを実施せず、リファレンスチェックのみ実施する企業もあります。
また、リファレンスチェックは実施せず、バックグラウンドチェックの他の項目のみ実施される場合もあります。
調査項目③反社会勢力との関係チェック
調査会社や公的機関のデータベースから応募者が反社会勢力の一員だったり関係を有していないかをチェックします。
調査項目④制裁リストのスクリーニング
応募者が各国の政府機関が公表している制裁リストの対象となっていないか確認します。
調査項目⑤ネガティブニュースのチェック
過去のニュース記事等を確認し、採用にあたって問題となりそうな履歴がないか確認します。
調査項目⑥訴訟履歴
調査会社のデータベースから応募者の過去の民事訴訟の記録を確認します。
調査項目⑦破産履歴
官報の情報から、応募者に自己破産の記録がないか確認します。
リファレンスチェックとの違い
バックグラウンドチェックとリファレンスチェックはよく混同されます。
両者の特徴は以下のとおりです。
バックグラウンドチェック | リファレンスチェック | |
---|---|---|
目的 | 企業が不利益を被るリスクを避けるために、 応募者の経歴に問題がないか確認 |
ミスマッチを避けるために、 応募者の勤務状況・働きぶりを確認 |
実施時期 | 最終面接から内定の間が多い | 最終面接から内定の間が多い |
調査項目 | 学歴・職歴・資格 反社チェック 制裁リストチェック ネガティブニュース 訴訟履歴 破産履歴 |
勤務状況(元上司・同僚へのヒアリング・アンケート) |
調査の実行者 | 調査会社 | 採用企業または調査会社 |
バックグラウンドチェックが実施される場合、そのいち項目として、リファレンスチェックも上記の目的のために行われることが一般的です。
採用企業によってはバックグラウンドチェックは行わず、リファレンスチェックのみ行うケースもあります。
リファレンスチェックについてはこちらの記事(リファレンスチェックとは?拒否できる?)で詳しく解説していますので、ぜひあわせてご覧ください。
バックグラウンドチェックは拒否できる?
バックグラウンドチェックの実施には応募者の同意が必要です。
従って、バックグラウンドチェックを拒否すること自体は可能です。
ただし、採用企業がバックグラウンドチェックを選考の中で重視している場合、採用を見送られる可能性が高くなります。
バックグラウンドチェックを拒否するということは、応募者の経歴について何か不都合な項目があるのではないかと、採用企業が推測するからです。
バックグラウンドチェックの対処法
さて、バックグラウンドチェックについて、ひととおり解説しました。
こちらでは応募者として考えられる6つの対処法について説明します。
- 応募書類は事実を正確に記載する
- 転職エージェント経由で応募する
- 強力なリファレンスを用意する
- 応募先を幅広く検討する
- 情報発信には細心の注意を
- 他の方法を打診する
①応募書類は事実を正確に記載する
バックグラウンドチェックの目的のひとつが、「経歴詐称」のチェックです。
学歴、職歴、保有資格等に虚偽の情報があると、調査会社のレポートで採用企業に報告される可能性が高いです。
誤植・誇張レベルを超える情報は採用見送りの材料となりえます。
採用企業に提出する応募書類には正確な情報を記載しましょう。
②転職エージェント経由で応募する
バックグラウンドチェックに関連して、応募者にとって転職エージェントを経由で応募するメリットは2つあります。
- 応募前にバックグラウンドチェックを実施する企業か確認してもらえる
- 過去の事例から対応方法をアドバイスしてもらえる
事前にバックグラウンドチェックを実施する企業であることが分かっている場合、
- 採用プロセスに時間がかかること
- 応募書類の内容について調査が入ること
があらかじめ認識できます。
また、バックグラウンドチェックの調査項目や拒否したい場合など、過去の事例から現実的な対応方法をアドバイスしてもらえることも期待できます。
転職エージェントには、バックグラウンドチェックを実施する外資系企業との成約実績が豊富にあるからです。
③強力なリファレンスを用意する
もしバックグラウンドチェックで選考に不利な事実が発覚した場合、第三者のリファレンスによって採用企業の印象を変えることができるかもしれません。
具体的には、前職の上司等が推薦者として、応募者の働きぶりや実績について自分のお墨付きで高い評価を与えてくれるケース等が考えられます。
バックグラウンドチェックで発覚した内容を覆すことは容易ではないことは事実です。
しかしながら、もし強力なリファレンスを用意できるのであれば、ダメ元でも採用企業側に提出してみる価値はあると考えます。
④応募先を幅広く検討する
リファレンスチェック・バックグラウンドチェックを実施する企業は実際に一定数存在します。
エンワールド・ジャパン社が2021年1月に303社に対して実施した調査によると、リファンレンスチェックの実施率は以下のとおりです;
- 外資系企業の実施率:58%
- 日系企業の実施率:23%
バックグラウンドチェックの実施企業は上記のリファレンスチェックの実施企業よりも少ないはずです。
実際、わたしはこれまで外資系企業4社に転職しましたが、
- リファレンスチェックを実施した企業:4社のうち2社
- バックグラウンドチェックを実施した企業:4社のうち1社のみ
でした。
従って、一部の保守的な業界を除けば、全体数で見ればバックグラウンドチェックを実施しない企業の方が多数派になります。
転職エージェント経由で応募する場合、バックグラウンドチェックを実施する企業かどうか事前に分かります。
応募する企業は幅広く検討し、バックグラウンドチェックを実施しない企業も応募の選択肢に入れておくことも対処法のひとつです。
⑤情報発信には細心の注意を
SNSやブログで情報の発信をおこなう場合には細心の注意が必要です。
SNS上での不適切な投稿や他のユーザーとの口論等は調査会社によってレポートに含まれる可能性があります。
また、投稿だけでなく、フォローしているアカウントもチェックされると認識しておきましょう。
一方、LinkedIn等のビジネスSNSにおけるポジティブな投稿や業界ネットワーク等はアピール材料として使える可能性があります。
SNSは使用方法に注意しながら有効活用しましょう。
⑥他の方法を打診する
何らかの事情で、どうしてもバックグラウンドチェックを回避したい場合は他の方法を打診してみましょう。
勤務先の在籍確認であれば、在籍を証明できる他の書類や記録を提出することで採用企業の懸念を払拭できる可能性もあります。
仕事の実績であれば、メディア等で公開されているものを共有することもひとつの方法です。
ただし、バックグラウンドチェックを実施する企業(特に大企業)は調査会社のレポートを重視していることが一般的です。
従って、他の方法については過度な期待はできないものと考えましょう。
バックグラウンドチェックとは? まとめ
以上、今回の記事ではバックグラウンドチェックについて応募者目線で解説しました。
- 採用企業と応募者のミスマッチを防ぐこと
- 採用企業に不利益をもたらす可能性のある人材を見抜くこと
- 応募書類は事実を正確に記載する
- 転職エージェント経由で応募する
- 強力なリファレンスを用意する
- 応募先を幅広く検討する
- 情報発信には細心の注意を
- 他の方法を打診する
応募者としては、バックグラウンドチェックに関する正しい知識を身に付けて、事前にできる対策を打っておくことが理想的です。
また、リファレンスチェックについては、バックグラウンドチェックよりも実施する企業が多くなります。
いますぐ必要ではなくても、現職や過去の在籍企業の上司や同僚でリファレンスチェックに応じてくれそうな人をあらかじめ確保しておきましょう。
この記事が少しでもみなさんのご参考になれば幸いです。最後まで読んで下さりありがとうございました!