転職活動でもし「新規事業のポジション」を紹介・オファーされたらどうしますか?
これまで新規事業に関わったことがなければ、迷われるのも当然だと思います。
ましてや、「転職」となるとまったく新しい環境で新規事業の成果を出すことが求められます。
わたしはこれまで11社での勤務経験がありますが、その中の4社で転職後に新規事業に関わりました。
その中で成功も失敗も経験しました。
成功体験については、なぜ成功だったと言える理由を説明します。
この記事を読めば、新規事業に関わるメリットが理解でき、自分のリスク許容度を測って新規事業へ転職すべきかどうか判断できる様になります。
それでは、新規事業への転職について解説していきます! ぜひ最後までお付き合いください!
企業が新規事業に参入する背景
われわれ求職者としては、採用企業が新規事業に参入する背景を知っておくべきでしょう。
背景を知ることが面接対策をおこなううえで有益だからです。
まずは企業が新規事業に参入する目的と方法を簡単に紹介します。
自分が検討している案件がどのパターンなのか確認しましょう。
企業が新規事業に参入する主な目的
①従来の事業からの転換
現在のビジネス領域が成熟期・衰退期にある場合、新しい領域のビジネスに転換することを模索します。
②事業ポートフォリオ・リスクの分散
ある特定の商品・サービス・ビジネスモデルに依存している場合、事業の多角化によってそのリスクを下げることを考えます。
③人材の育成
将来の幹部候補に対して、事業の立ち上げ・マネジメントを任せて人材を育成することを目的とします。
企業が新規事業に参入する方法
①社内に新規事業部門を設立
社内に新規事業部門を担当する部門や準備室を設立する方法です。
わたしが関わった4社での新規事業ののうち、2社がこのパターンでした。
求職者としての機会:
- 新規事業の分野において、その企業が社内でもっていないノウハウと経験を提供してくれる人材の募集が出る可能性があります。
②企業または部門の買収
社内で新規事業を育てるには時間がかかるため、参入する事業をもつ企業や部門を買収する方法です。
わたしが関わった4社での新規事業のうち、2社がこのパターンでした。
求職者としての機会:
- 買収された企業に所属していた社員が離職すると欠員補充の機会があります。
- 買収した側の企業でもその会社・部門を管理する人材が必要となるため、その増員の募集も期待できます。
③他社とのパートナーシップ
社内で新規事業を立ち上げたり、他の企業を買収することはリスクもあります。
そのため、まずは他社とのパートナーシップという形で新規事業の分野に参入し、事業の将来性を見極める方法です。
求職者としての機会:
- 新規事業を管理・推進する人材が社内にいない場合、その増員の募集を期待できます。
新規事業への転職の成功例
わたしが関わった4社での新規事業のうち、2つは現在も存続しています。
そのなかの成功だったと言える転職を紹介します。
新規事業への転職で検討したポイント
こちらの新規事業を立ち上げる企業への転職を検討していたとき、前職の会社が債務超過に陥っていました。
前職に残る方がリスクが高かっため、転職する決断に時間はかかりませんでした。
とはいえ、次項で説明する失敗を前職で経験していたため、以下のポイントを検討したうえで決断しました。
- 本業との親和性が高い新規事業か?
- 自分の経験・スキルが高く評価される事業か?
- 待遇にリスク・プレミアムがプラスされているか?
- 次の転職にアピールできる実績となるか?
- 新規事業から撤退したときの自分のリスクは何か?
①本業との親和性が高い新規事業か?
新規事業と本業との親和性が高ければ高いほど、新規事業の分析の精度が上がり、本業とのシナジーも期待できます。
よって、事業の将来性の見込み違いや撤退リスクも低いと考えられます。
②自分の経験・スキルが高く評価される事業か?
これは新規事業に限ったことではないですが、募集されているポジションが
- 自分の経験・スキルが十分に発揮できる職務内容か
- その企業において貴重な存在として扱ってもらえるか
の2点を確認しました。
リサーチしたところ、当時その企業では私が扱っていた商材を担当する人材がほとんどいなかったことが確認できました。
③待遇にリスクプレミアムがプラスされているか?
給与テーブルに柔軟性があまりない日系企業のオファーではあまり見られないかもしれません。
外資系企業では、新規事業のポジションを募集する際に、そのリスクを考慮して待遇に上乗せをすることがあります。
そうでないと優秀な人材がリスクを冒して入社してこないという根拠のようです。合理的だと思いませんか?
④次の転職にアピールできる実績となるか?
かりに新規事業から撤退した場合、次の転職先を探さなければならない事態となることも考えられます。
したがって、そこから得られた経験・スキルが次の転職でアピールできるものかどうか検討しました。
この機会ではわたしにとっては初めての外資系企業への転職でかつ業界内の知名度の高い企業でした。
そのため、グローバル企業での勤務経験がその後の転職にプラスになると考えていました。
実際に、その後の転職活動でもこのグローバル企業における経験を面接でよく聞かれました。
⑤新規事業から撤退したときの自分のリスクは何か?
転職先の企業・所属部門が新規事業から撤退した場合、その担当者として負うリスクは、
- 他部門への異動(降格)
- 合意退職
- 整理解雇
などが考えられます。
わたしの場合は前職が債務超過の状態で、そのまま前職に残る選択肢は現実的ではなかったので、この点はあまり重視しませんでした。
しかしながら、もし現在安定している企業で働いているのであれば考慮すべきポイントです。
この新規事業への転職が成功と言える理由
今この転職機会を振り返って、この新規事業への転職が成功と言える理由は4つあります。
- 待遇が改善された。
- 新規事業の立ち上げ経験という実績を手に入れた
- コミュニケーション能力が向上した
- 転職エージェントとの関係が濃密になった
①待遇が改善された。
この転職において、わたしは2つのプレミアムを得ることができました。
ひとつは外資系プレミアム(日系よりも外資系の方が高待遇)でもうひとつは新規事業プレミアム(先に述べた新規事業の参入リスクを考慮した待遇の上乗せ)です。
通常は同業界・同職種の転職において、あまり待遇の改善が期待できません。
しかし、この転職では2つのプレミアムがあったため、待遇が前職の日系企業からかなり改善されました。
また、この外資系企業で得られた待遇をその後の転職でベンチマークとしても使うことができました。
②新規事業の立ち上げ経験という実績を手に入れた
職務経歴書に新規事業の立ち上げ経験を記載できるメリットは大きいです。
まずは労働市場で新規事業の経験者が少ないため、新規事業立ち上げの募集があった場合、選考で優位に立てます。
あとは面接の場で、新規事業で苦労した経験や克服した経験などのストーリーが語りやすいということがあります。
新規事業での実績はSTAR形式にもはまりやすく、説得力のある実績の説明を作ることが可能になります。
STAR形式については 以下の記事で解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
③コミュニケーション能力が向上した
社風にもよりますが、わたしが経験した新規事業ではいずれの会社でも既存の社員から積極的なサポートを当初から得ることは難しかったです。
既存の社員からすると既に多忙であるところに新規事業の業務が追加され、転職してきた人材に会社のルールや手順を教えるのも結構な手間になります。
もちろん新規事業に従事する人材も会社のミッションを背負っていますので、遠慮する必要はないかもしれません。
ただし、どの企業においても既存の社員をリスペクトしながらコミュニケーションを取る工夫が必要でしたので、コミュニケーション能力は向上しました。
④転職エージェントとの関係が濃密になった
新規事業部門に在籍していると、人材の採用にかかわる機会も増えてきます。
そうなると知り合いの転職エージェントに採用側として相談することとなります。
転職エージェントには自分の転職機会の相談もしていますので、転職エージェントにとっては、不動産の両手取引の様に2度おいしい顧客となりえます。
この様な機会があった転職エージェントとは10年以上良いお付き合いさせていただくケースもあります。
新規事業への転職の失敗例
一般的に新規事業の成功率は5%から10%程度と言われています。
わたしの場合は、関わった4つの新規事業のうち、ひとつは数年で撤退という結果でした。
こちらでは、わたしが経験した失敗例を紹介します。
当時急成長中のIT企業があり、積極的に新規事業の領域における会社の買収を繰り返していました。
先にその会社に転職していた元同僚から、「買収したばかりの子会社のいくつかを管理職として担当して欲しい」とのオファーがありました。
わたしは当時まだ管理職経験がありませんでしたので、キャリアアップの良い機会だと判断して、その会社に転職することにしました。
しかしながら、親会社の業績不振もあり、買収した子会社のほとんどは数年後に売却または清算という結果に。
急激な拡大路線が完全に裏目に出たのです。
親会社もリストラを行っていましたので、当然売却・清算された子会社の人員を受け入れる余裕もなく、わたしは慌てて転職活動を開始することとなりました。
この失敗例から以下のことを学びました。
- 親会社に新規事業から全面撤退できる体力があるかリサーチすべきだった
- 急成長に対してマネジメントとガバナンスが追い付いているか確認すべきだった
- 必要に迫られる前から転職市場の情報収集を継続しておくべきだった
新規事業への転職の失敗を回避する6つのコツ
- 現職で新規事業に参入する予定がないか確認する
- 過去の実績を調べる
- 他部門への異動が可能か調べる
- スキルアップ・キャリアアップが実現できる機会か見定める
- 手元の生活資金を用意しておく
- 副業でリスクヘッジする
それでは失敗を回避する6つのコツを順番に解説していきます。
失敗を回避するコツ① 現職で新規事業に参入する予定がないか確認する
そもそも転職自体にリスクがありますので、一度現職の企業で新規事業に参入する予定や計画がないか確認することをおすすめします。
もし社内で新規事業のポジションが公募されるのであれば、まずは慣れている現職の環境で経験してみるのもリスク回避策のひとつです。
失敗を回避するコツ② 過去の実績を調べる
応募を検討している企業に過去に新規事業への参入経験があれば、その実績や新規事業に対するその企業の方針を知ることができます。
企業によって数年で撤退を判断するところもあれば、長期的に見守るところもあります。
自分のリスク許容度として、数年で転職可能であれば問題ありません。
しかしながら、長期的にその企業で勤務することを考えているのであればその企業の実績・方針をチェックするべきです。
失敗を回避するコツ③ 他部門への異動が可能か調べる
新規事業から撤退、となった場合、他部門や他の関連会社で新規事業に従事していた人材を受け入れる余地があれば安心です。
なかなか調べるの大変ですが、過去の実績を調べたり、転職エージェントに問い合わせてみるのが良いと思います。
臨まない異動であっても、受け入れ先があれば、少なくとも経済的に安心して転職活動を行う環境が得られます。
失敗を回避するコツ④ スキルアップ・キャリアアップが実現できる機会か見定める
最悪のケースとして、新規事業から撤退した場合、その会社を離れなければならないことも想定されます。
それでもその新規事業で今後のキャリアに活かすことができるスキルや経験を手に入れることができたのであれば有意義だったとも言えます。
また、その企業での新規事業は失敗に終わったとしても、成長市場での経験が得られたのであれば、その後の転職活動でも活かせる機会が訪れると思います。
失敗を回避するコツ⑤ 手元の生活資金を用意しておく
新規事業から撤退というリスクは完全に排除できません。
したがって、最悪のケースとして退職を想定してある程度必要な生活資金を確保しておくことをおススメします。
もし、新規事業への転職で収入が増えたのであれば、生活のレベルは急に上げずに事業が軌道に乗るまでは手元の現金を増やしておくこともリスク管理の一環といえます。
リスク許容度は人それぞれです。
若手の場合は3か月程度の生活費、中堅からミドル世代では6か月から1年程度の生活費を確保しておくと、離職後の転職活動も落ち着いて行えるのではないでしょうか。
失敗を回避するコツ⑥ 副業でリスクヘッジする
新規事業のリスクに限りませんが、会社員としての給料以外の収入源を確保しておくと、万が一のことがあっても安心です。
もし、不動産等への投資で金融機関からの融資を検討している方は、転職前に実行しておくことをおススメします。
金融機関によっては、転職後はしばらくローンの審査が通らない場合があります。
新規事業への転職:まとめ
以上、今回の記事では新規事業への転職の成功例・失敗例と失敗を回避するコツを解説しました。
- 現職で新規事業に参入する予定がないか確認する
- 過去の実績を調べる
- 他部門への異動が可能か調べる
- スキルアップ・キャリアアップが実現できる機会か見定める
- 手元の生活資金を用意しておく
- 副業でリスクヘッジする
新規事業への転職はリスクもありますが、わたしは新規事業に関わったおかげで様々なスキル、経験、人脈を得ることができました。
新規事業への転職を決断するにはやはり情報の収集と分析が重要となります。
個人で収集できる情報には限界があります。その場合、その企業のことを良く知る転職エージェントがいるととても頼りになります。
転職エージェント経由で応募し、内部の情報を提供してもらうことでいくつかのリスクを回避することができます。
最後まで読んで下さりありがとうございました!